平凡社ライブラリー
「父の娘」たち―森茉莉とアナイス・ニン

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  • サイズ 文庫判/ページ数 255p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784582765793
  • NDC分類 910.268
  • Cコード C0390

内容説明

「あるがままのわが身を美とみなす不遜のわざだけは、さいごまで自分には無縁のままにとどめたい。美意識とはおそらくそういうものではないだろうか」無欲で、精神的で、非妥協的な「少女」とは、いったい何者なのか。森茉莉とアナイス・ニンという「少女」を通して解き明かす「不滅の少女」論。

目次

鴎外の娘―森茉莉・人と作品
至福の晩年
その「微笑ひ」をこそ―『甘い蜜の部屋』の内外
「蜜の文学」の成立
犀星と茉莉―「蜜の文学」の系譜
茉莉さんの常食・茉莉さんの写真
卯歳の娘たち
対談 父と娘の深い恋愛
モイラとアナイス―「不滅の少女文学」序論
“神”としての日記
ほんとう?の児童文学
「父の娘」さまざま―アナイス・ニンの『インセスト』をめぐって
お友達はダイナマイト―『アナイス・ニンの日記』の問題点
熱風の吹きやむまで
恢復期としての生―ある老・少女論の試み
二人の翠をめぐって
「わたしひとりの部屋」から
「わたしひとりの部屋」以後
早すぎ、長すぎた生

著者等紹介

矢川澄子[ヤガワスミコ]
1930年、東京都生まれ。東京女子大学英文科、学習院大学独文科を卒業後、東京大学文学部美学美術史を中退。詩や小説、翻訳など多彩な文筆活動で知られる作家であり、児童書の翻訳家・児童作家としても有名。2002年5月29日没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

あつひめ

25
明治の文豪、森鴎外。その娘茉莉。鴎外の作品も学生の頃授業で読んだきりでほとんど覚えていない。そして父親と同じ職業を選んだ茉莉については全くの予備知識もないままこの一冊を手にしてしまった。まずは、茉莉さんの作品を読んでみないとその人柄と作品に向ける思いはつかみ難いけれど、矢川さんの目を通した茉莉さんは、鴎外の重石を無意識に感じ取りつつ自分と言うものを自分で作り出そうとした人なのかもしれない。矢川さんと茉莉さんの「縁」も感じつつ、どんな人なんだろうと思いを馳せた。早速茉莉さんの作品を読んでみなければ。2011/02/25

あ げ こ

10
去年よりずっと『アナイス・ニンの日記』を読んでいるため、アナイス・ニンに関する部分を再読。したたかな取捨選択による熱情と愉悦の欠落。”作品”へと昇華するために省かれたものの熱さ、密やかさ、大胆さ、忙しなさ、底知れなさ…。稀有で貴重な交遊に潜む、淫靡な時間の存在を、その多さを知り、強く思う事。誰も、彼女を愛した全員を以てしても、彼女を満たす事、彼女を奪う事は出来ない。日記と言う、絶対的な存在(際限のない自分を吐露し、まとめ、探り続ける場。縋るべきもの。)を持つ為に。真の安寧も充足も、日記への耽溺の中にのみ。2016/03/27

茶器

5
【「父」の文学に対置されるべきものは、断じて「母」の文学ではない。相補概念としてのそれは、「娘」の文学なのだ。もしくは「少女」のそれといってもよい。】2016/05/29

みずいろ

5
「少女」という主題は非常に奥深い。かつて女の誰もが少女でありながら、その生態を的確に言いあてられる人はなかなかいないのだから。著者は、特異でありながら他人事ではない緊張感を持っている、小説に生きる少女像をいくつか挙げていく。「少女」の神聖と魔性を、その描き手を絡めて見つめた。現実の3ミリ上を歩くように生きていく少女に魅せられた著者が、現実のおぞましさを前に自ら命を絶ったことには、どこか因縁めいたものを感じずにはいられない。「そんな世界に生きていなくていいのよ」なんて、いかにも無垢な少女が囁きそうだ。2012/05/31

ぼっせぃー

1
収録順に前から読んでいくと、森茉莉とアナイス・ニンのために立ち上げられた「少女」というモデルが、敬愛した女性作家たちの哀しき晩年の鎮魂に援用されていく過程が見てとれ中々につらいものがある。ニンの日記についての記述は面白く、ぜひ読んでみたい。2015/06/22

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