内容説明
神の死、永却回帰、超人、力への意志…過激に大して深遠なニーチェの思想は、なぜ今なお私たちの心をゆさぶるのか?ニーチェの多義的な思想を挑発的なテクストを生かしながらその全体像を描き出すことに成功した画期的なニーチェ・アンソロジー。
目次
思想と生涯 運命愛の思想家ニーチェ
1 人生と思索
2 神の死とニヒリズム
3 力への意志と超人
4 運命愛と永遠回帰
補論 ニーチェ―生きる勇気を与える思想
著者等紹介
ニーチェ,フリードリヒ・ヴィルヘルム[ニーチェ,フリードリヒヴィルヘルム][Nietzsche,Friedrich Wilhelm]
ドイツの哲学者。1844年、ザクセンの牧師の息子として生まれ、ボン、ライプチヒ両大学に学び、ワーグナーとショーペンハウアーに傾倒した。24歳でスイスのバーゼル大学教授となり、同僚のブルクハルトに大きな感化を受けながら、古典文献学者として、当時のヨーロッパ思想の根源への批判を開始する。1879年大学を辞し、10年に及ぶ漂泊のなかで著作を続けるが、1889年に発狂、ワイマールに没した
渡邊二郎[ワタナベジロウ]
1931年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了後、1964年から92年まで東京大学文学部で西洋哲学史、特にドイツの近現代哲学を専門に講じる。東京大学名誉教授、放送大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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踊る猫
30
ひょんなことからニーチェに惹かれて、このコンパクトな本を手に取った。胡散臭い、だが華麗なレトリックに騙されずに(もちろん、騙されて酔い痴れるのも悪くないが)読めばニーチェの本質は「あるがまま」「ありのまま」を肯定し、そのまま「今ここ」を肯定する力強い思想だったことが分かる。もっとも、ニーチェのスゴイところはその肯定を延々と苦悩(本書の言葉を使えば「自己喪失」と「自己環帰」)することを通して得たところだろう。ひと言で言えば、愚直。マジメ過ぎ。だからこそ最高にカッコ悪い思想家だし、信頼するに足る我らの兄貴分だ2020/03/28
くまさん
26
「新しい年によせて。――まだ私は生きており、まだ私は考えている。私はまだ生きなければならない。というのも、私はまだ考えねばならないからである」。「私は、もろもろの事物における必然的なものを美しいものと見ることを、いよいよ多く学ぼうと思う」。「私は、いつか他日、ただただ一人の肯定を言う者でだけであろうと思うのである」。〔…〕「私は、この太陽と一緒に、この大地と一緒に、この鷲と一緒に、この蛇と一緒に回帰してくるのだ」。自然と他者とあらゆるものたちを尊重し、現在を生きる歓びを証す永遠のアンソロジー。渡邊二郎訳。2020/01/05
梟をめぐる読書
8
ショーペンハウアーやペソアの場合とは違い、ニーチェの断章を読んでもそれがそのまま〝啓発〟に繋がることは殆どない。それは恐らくニーチェの思想があまりに普遍性を欠いて苛烈であり、有用性という尺度によっては測れないことの証左であるのだが、最上の理解者によるアンソロジーとなれば話は別。その著作の全貌から「生きる勇気を与える思想」としての受容の可能性を浮上させつつ、複数の作品に言及が跨り、本人の言葉に即しての理解を難しくしてきたキー概念についての断章を一挙に通覧可能にするなど構成の妙が光る。極上のアンソロジー。2013/06/13
希い
5
生の哲学者ニーチェのアンソロジー。抜粋は主要全作品に渡るが、書簡は皆無。処々に編者の補論が挟まれて居り、尚且つ自然なニーチェ論である事から、初めてのニーチェ読者も愉快に読める抜群の入門書と云えるのではなかろうか。本書全体の構成と採録した文章から判断するに、テクストから浮き彫りとされるニーチェ像は、一般的な解釈に即して居り、信頼の置けるものと思われる。翻訳は平明で、無理な文章も少ない。抜粋された殆どの断片がニーチェの思想の要諦である事に、思想自体の先鋭さも相俟つて、刺激的な読書の一時を確約しうる良書である。2013/01/07
ア
4
ニーチェおもしろい。なんとなくは分かった。「大いなる正午」とか『ツァラトゥストラ』の比喩あたりはよくわからなかったけど。最初の「人生について」としてまとめられているあたりは、自分の人間関係について言われているようでハッとした。 平凡社のアンソロジーシリーズ、とてもありがたい。2022/01/11