内容説明
ひょんなことから平穏な日常が一変してしまう人間社会の不条理を、ユーモアと鋭い批評眼で綴るチャペコマニア待望の短編傑作集。スペイン市民戦争やナチスドイツの台頭、歴史上の侵略者を皮肉る寓話や警句は、混迷を深める世界に生きる21世紀の全人類必読。
著者等紹介
チャペック,カレル[チャペック,カレル][Capek,Karel]
1890‐1938。北東ボヘミア(現在のチェコ)の小さな鉱山の町、マレー・スヴァトニョヴィツェに生まれる。プラハのカレル大学で学んだ後、ベルリンとパリに留学、帰国後の1916年頃から創作を開始し、1921年に『リドヴェー・ノヴィニ(人民新聞)』社に入社、生涯、ジャーナリストとして活動した。その一方で、戯曲・小説・評論・童話なども執筆、幅広いジャンルで秀作を残す。戯曲『R・U・R』(邦題『ロボット』岩波文庫ほか)において、画家で作家でもある兄のヨゼフとともに生み出した「ロボット」という言葉は、世界中に広まった。一貫してファシズムに抵抗し、死後は共産党により反体制の烙印を押されたこともあるが、チェコの国民的作家として、世界中の多くの人々に親しまれ続けている
飯島周[イイジマイタル]
1930年、長野県に生まれる。東京大学文学部言語学科卒業。1967年以降、数度にわたりチェコのカレル大学に留学。言語学専攻。跡見学園女子大学名誉教授
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キムチ27
38
20世紀最悪の時代、最悪の場所で生を成した筆者。肩から力を抜いたような独特の文体は100年の時を経てもアフォリスティックな輝きを持っている。一行一行軽んじられぬほど重い内容なのに、読み切ってしまった。。何か申し訳ない気持ちで一杯。再読するにはひりつく痛みがあり、辛い。ポケット短編集、遺稿、寓話集の3部構成のこの文庫本、高校生でも読めるのではないかと思うほどのとっつきやすさ。スペインそしてナチス台頭を目の当たりにし、『いわせてくれ』とつぶやく彼の吐息を感じる。2015/07/16
ロア
26
牧歌的で温かみある優しいお話…だけじゃない!研ぎ澄まされた視点をユーモアでくるみ、ファシズムに鋭く切り込む短編や寓話など、幅広い作品が収録されています。ロボットという言葉を創り出したことでも有名なカレルとヨゼフのチャペック兄弟は、ナチスが権力を掌握していた時代のチェコで、ファシズムに抵抗し民主主義のために戦い続けたのです(;ω;)2016/03/01
chanvesa
21
この頃のチャペックは、かなり絶望的というか、しんどい精神状態だったのだろうか。前半の短編群はどれもこれも苦いユーモアがあふれている。「フォアグラのパテ」なんて猫を毒味役にするなんて嫌な話だ。「空想について」の「利己的なことほど空想を制限するものはない」という言葉の前の「大人になっていて、その結果、利己的だから」(141頁)のなんと意地悪なことだろう。寓話集(アフォリズム)も全体に直接的な皮肉が多い。2015/06/08
mm
17
チャペックは1890年生まれ1938年没のチェコの作家。ロボットと言うのは彼の造語である。まとまりのある作品から読めばよかったのか?この本の中には、ポケット短編・遺稿・寓話集が収められていて、彼の考えのカケラが一面に落ちている感じ。独特のユーモアで、皮肉に見えるところもあるけど、人としては暖かい人だったんじゃあないかな。あらゆるものを相対的に見る視線とユーモアが秀逸。バカンス先でも雨は呪われるけど、農夫には祝福される。長所は言い換えれば短所みないな視点、ファシスト台頭への警鐘、世界の未来へのラブコール等。2016/11/08
羽
16
ポケット短編集、遺稿、寓話集の三部構成。「こまった人たち」の可笑しみのある話がすき。読み進めるうちに、ものごとを批判的に見る目が養われるところもいい。ユーモアもあり、ある種の鋭さももっている、そんな文章を求めているひとにオススメ。2020/12/01