内容説明
本書では、経済の問題だけではなく、戦争と平和、安全保障、日本国憲法、環境危機、民主主義などが、多岐にわたって論じられている。だとするとなぜ、『経済成長がなければ…』なのか?それは、経済発展を目指すことこそが現実的であり、それ以外は理想論にすぎないという考え方にこそ、本書で扱った多くの問題の核心があるからである。
目次
第1章 タイタニック現実主義
第2章 「非常識」な憲法?
第3章 自然が残っていれば、まだ発展できる?
第4章 ゼロ成長を歓迎する
第5章 無力感を感じるなら、民主主義ではない
第6章 変えるものとしての現実
著者等紹介
ラミス,C.ダグラス[ラミス,C.ダグラス][Lummis,C.Douglas]
1936年、サンフランシスコ生まれ。政治学者。カリフォルニア大学バークレー本校卒業。60年に海兵隊員として沖縄に駐留。61年に除隊。80年津田塾大学教授。2000年3月、同大学を退職。現在は沖縄を拠点とし、執筆や講演などを中心に活躍
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感想・レビュー
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樋口佳之
28
タイトルで誤解が生じてました。もっと包括的な議論です。解説を書かれた方、新入生ゼミの最初の一冊に使っているそうで、それに適する内容だと感じました。/けれども、奴隷の定義は余暇のない人間である、と考えれば、われわれの社会はどうだろうか、ということになる。勤務時間外にほとんど暇がないという状態が日常であるとしたら、私たちのほとんどはアリストテレスのいう奴隷の範疇に入っているということになるのではないでしょうか。2018/06/04
スパイク
13
まいったぁ。探してたのは、こんな本です。私(たち)がこれから目指す豊かな生き方は、こんなです。と、提示してくれている。著者も書くように新しい考えではないらしいが私のところに届いた本でははじめて。市場経済、消費経済、グローバル経済に未来はないということまでは、わかっているのですが、それならどうする?ということが書かれている(かつ私に理解できる)素晴らしい本です。マルクスは難しすぎた。10年以上まえに書かれた本であるが、今でも充分通用する。『対抗発展』という考え方に、諸手をあげて賛成します。⇒コメに続く2014/05/11
Yuji Hamano
7
今、自分が乗っかっているものがタイタニックであるという事が理解できた。三世代かけた国家的なイデオロギーとして経済成長を目標に掲げ労働と消費が「常識」行動とされてきた変遷を教えてくれる。平行して国家が持つ軍隊とその意味や結果を根っこの同じ問題として取り上げており、いかに過去から今にいたり世界中の「常識」が変わり続けてきているのかを解きほぐしてくれる。かつて存在した「強制労働」という単語が無くなってきている一方、実態は今もあるのではないかという問題提起、どれほどに日常的な問題であるか考えさせられる。2015/11/26
いづむ
7
「経済発展」というイデオロギーの普及によってもたらされた結果生じた、現代の私たちが問題と思っている事柄の仕組みが説明されている本です。近代の経済発展の中での強制労働の果たした役割や、「途上国の貧困」が経済発展あってこその結果であることなど、今まで思ってもみたかった視点を示され、経済だけでなく多くの社会問題への見方を変える訓練になりました。やはり世界は今パラタイムシフトか必要なのかもしれません。(図書館本)2014/11/26
左手爆弾
7
本書は新しい常識に挑む本である。我々は環境問題を無視すれば地球が滅ぶことを知っているし、このままの経済を維持できないことを知っている。それでも日々のルーチンワークに追われ、あたかも氷山に突っ込むタイタニックのように、「現実」は動いていく。筆者の語る「タイタニック現実主義」は非常に重要な言葉であろう。もちろん、筆者が提示する諸々の解決策が適切なのかはよくわからない。批判や議論としては古いかもしれない。しかし、現実の認識の仕方、「常識」との向き合い方、それらを考えるのには大変良い本であるといえる。2012/10/25