出版社内容情報
洋の東西を代表する二人の大旅行家が指し示す現代日本を見る視座は今日ますます得難く貴い。講演をまとめた本書は宮本民俗学の格好の入門書でもある。解説=佐野眞一
内容説明
五十余年の歳月と十六万キロの旅程。日本列島の白地図にその足跡を、赤いインクで印していけば、列島はまっ赤になるといわれた、その人。西の大旅行家の名紀行をその人、宮本常一が、読む。日本民族と日本文化の基層を成す岩盤を、深く鋭く穿ちながら―。
目次
第1章 穀物や果物が豊富で、地上の楽園のごとく、人々は自由な生活を楽しみ東洋の平和郷というべきだ(「置賜県雑録」より)
第2章 蚤の大群が襲来したために、私は携帯用の寝台に退却しなければならなかった
第3章 子どもたちは、きびしい労働の運命をうけついで世に生まれ、親たちと同じように虫に喰われ、税金のために貧窮の生活を送るであろう
第4章 仕事もなく、本もなく、遊びもない。わびしく寒いところで、長い晩を震えながら過ごす。夜中になると、動物のように身体を寄せて暖をとる
第5章 あらゆる種類のお面や人形、いろいろな姿に固めた砂糖、玩具、菓子類が…。日本では、どんな親でも、祭に行けば子どもに捧げるための供物を買うであろう
第6章 私はシーボルト氏に、これからもてなしを受けるアイヌ人に対して親切に優しくすることがいかに大切かを伊藤に日本語で話してほしい、と頼んだ
第7章 いつか遠い昔において彼らは偉大な国民であったという考えにしがみついている。彼らには、互に殺し合う激しい争乱の伝統がない
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
93
イザベラ・バードの日本奥地紀行をわかりやすく宮本常一さんが読み解いてくれる本です。話し言葉でわかりやすく当時の日本の状況がわかるようです。味噌汁が外人にとっては何なのか不明で気味悪い、とか、のみがそんなに多かったのかということが今生活している自分たちにはわからない、というか遠い時代になってしまったのでしょう。原文もそのうち読んでみたいと思っています。2015/09/02
あきあかね
21
明治の黎明期に東北、更には蝦夷地まで旅をしたイザベラ·バードは、冷静で客観的な眼と、愛情を持った温かな眼で、当時の日本人、日本文化を書き記した。 本書では、日本列島津々浦々をくまなく歩き尽くした民俗学者宮本常一の該博な生きた知識によって、バードの体験がより深く、重層的なものとなっている。 例えば、青森で出会った当時のねぶた。「私は、このように全くお伽噺の中に出てくるような光景を今まで見たことがない。提灯の波は揺れながら進み、柔らかい灯火と柔らかい色彩が、暗闇の中に高く動き、提灯を持つ人の姿は暗い影の中⇒2019/05/03
清水勇
10
この本は、明治11年に通訳を付け女性一人で東京から日本海経由で北海道迄旅した英国人イザベラバードの旅行記をテキストとして40年前に行われた民俗学者宮本常一氏による講読会での話。イザベラ女史も凄いが宮本氏も凄い方で、大正末期から戦後にかけ日本列島津々浦々を踏破(16万km)。山深い僻村や絶海の孤島で古老達から貴重な聞き取りを行って得た記録に残らぬ日本民俗の知見を有する。イザベラの旅行記を宮本氏がその知見を駆使して解説することで、当時の民衆の実態を知ることができる。凄い二人の組み合わせをワクワクして楽しんだ。2021/09/22
pugyu
10
原本は読んでいませんが、講義を聴いてるスタイルで面白く読みました。外国人からみたフラットな日本。好奇心が強く、礼儀正しく、子供を大事にする。今に通じるところもあるし、失ってしまったところもある。イザベラバードの紀行文から著者が他の地域と比較したり類似を出してくれたり面白かった。アイヌの話はもっと解説してもらいたかった。2015/12/06
filter
9
先に『日本奥地紀行』を読まないと勿体ないので、これから読まれる人は是非イザベラ・バードさんの本書を読む事をお勧めします。 『日本奥地紀行』の中で語られた事に対する深いつっこみが素晴らしい。2015/01/29