出版社内容情報
大切なのは、概念の発明と情動の開放とを結びつけること。スピノザとドゥルーズのコラボレーションが生んだ現代のエチカ。付論、年譜、書誌を併収する増補決定版。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おたま
39
ドゥルーズの『スピノザ』は分かりやすい、と言われても、やはり読んでみると分かりにくいところも多い。最初の方の「道徳と生態の倫理」「善悪」についてのところは大体理解することができるのだが、後半の「共通概念」や「三種の認識」の辺りになると難しい。そもそも途中の「『エチカ』主要概念集」のところを、『エチカ』を読むときに活用すればよいと、斜め読みしたのがいけなかったか。「共通概念」については、安冨歩が述べていたように、「共感・同期=ハーモニー」と捉えると意味が理解できるように思う。2023/01/26
しゅん
19
ドゥルーズによるスピノザ解説。四章の『エチカ』概念解説集はスピノザ読む上で非常にありがたい代物で、「持続」と「永遠」が対立項になってるはここを読んではじめて気づいた(持続は時間的、永遠は非時間的な概念)。二章の「道徳」と「倫理」の違いは明快で面白く、スピノザの画期的な点がよくわかる。三章で紹介されている、穀物ブローカーがスピノザに「喜びから発する行いは良いというけど、そもそも犯罪を好む人間はどうなるんすか?」ともっともなことを聞いた往復書簡は質問が生々しい故に興味深い。是非本文を読んでみたい。2019/02/05
chanvesa
19
「『エチカ』主要概念集」はかなりの難関。全くわからない。この章を挟む短い論文は、『エチカ』に関するイメージを喚起させる。第3章「悪についての手紙」における【分解と合一】、【内発的、免疫的な変様】の議論はニーチェ的な強さとスピノザのアメーバ(マクロファージ)的な強さが合体しているような印象を受けた。第6章「スピノザと私たち」の【触発し触発される力】は寛容の強さを感じた。鈴木雅大さんの解説の「二人の足の裏を合わせて動かす」話、これもイメージしやすかった。とにかく難しかった。また出直し要。2014/12/17
みみ
18
2回目。すごく面白かった。まだ分からないところはあるし、他のドゥルーズの著作を読んだこともないけど、ドゥルーズは読み手としての並外れた能力の持ち主だったのでは?と感じずにはいられない。本書冒頭、『エチカ』についてのマラマッド『修理屋』からの引用で「魔女のほうきに乗っかったような気になります」とあるが、個人的にはこの言葉は『エチカ』そのものよりもこの本の方によりぴったり当てはまるような気がする。2020/07/08
rosa
17
ドゥルーズという新たなレンズ磨き職人が、独自の視点でスピノザ哲学に光を照らした名著。全ての章が際立っており、心身並行論や自由意志の錯覚に至る経緯、悲しみの切り下げなどの主要な疑問点を丁寧に説明してくれます。私は特に第三章「悪についての手紙」に感銘を受けました。人間は本性上善しか有せず、悪は外部との比較において生じるに過ぎないというスピノザの捉え方は衝撃的です。この本自体が様々な身体の統一・合一を経て出来上がった「共通概念」の結晶ではないでしょうか。本当に素晴らしい本です。 2012/11/11