内容説明
文明開化期の日本…。イザベラは北へ旅立つ。本当の日本を求めて。東京から北海道まで、美しい自然のなかの貧しい農村、アイヌの生活など、明治初期の日本を浮き彫りにした旅の記録。
目次
初めて見る日本
富士山の姿
日本の小船
人力車
見苦しい乗車
紙幣
日本旅行の欠点
サー・ハリー・パークス
「大使の乗り物」
車引き〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ハイランド
114
やっと読了。読んだーという気にさせられる一冊である。五十歳近いイギリス人女性が、通訳一人を共に東北北海道を旅する。天気や体調もあっただろうが、土地による好悪の感を隠そうとせず赤裸々に描写する。東北人としてはなじみ深い地名が出てきて興味深く読み進めたが、圧巻は北海道に渡ってのアイヌ人そしてアイヌ集落の描写である。当時の典型的日本人であろう通訳伊藤の「アイヌは人間じゃない」という言葉が突き刺さる。西洋人が見た明治初期日本。この一冊は優れた旅行記であると同時に、黎明期の明治日本の有様を記録した貴重な一冊である。2017/09/02
やいっち
79
当時として稀有な、そして貴重な書である。 彼女は最愛の妹への手紙の形で、紀行文を書き綴ったのだった。しかも、彼女は持病を抱えていて、健脚とは到底、言いがたい方。 実際には、健康(転地療養)のため(それと文明化された国に馴染んで暮らすことができない性分のためもあって)、世界各地を旅した。 従者(通訳を兼ねる)一人のみを伴って。 http://atky.cocolog-nifty.com/bushou/2011/11/post-3c41.html 2011/11/07
saga
57
2016/10/5に読み始め、イザベラと共に旅ができた。横浜を起点として東北から蝦夷(北海道)への旅行は、当時の交通手段、装備品を思うと47歳の著者には過酷に過ぎるものと推察される。しかし冒険家の血とでも言うのか、彼女は江戸時代の習俗が残る東北・北海道の旅を全うする。妹に当てた手紙は、日本語訳では当時の地理、習俗等を淡々と書き綴る文体で、学術的な報告書よりも伝播力がすごい。辺境作家・高野秀行や宮田珠己と重ね合わせている自分がいた。2016/10/25
ばう
52
★★★★明治11年、日本にやって来たバードは誰も分け入ったことのない様な道を辿って北海道まで行く。その眼に映る日本はとても貧しく不潔で、宿は蚤だらけ。けれどそれ以上に彼女の心を引きつけたのは、貧しくとも礼儀正しく親切な人々と雄大な自然の姿だった。悪天候や病気、怪我、道中の悪路に悩まされながらも旅を続けるバードに頭が下がる。そして通訳兼ガイド伊藤の存在。時に伊藤の欠点に批判的な目も向けるけれど有能で向上心のある彼無くして旅は続けられないと信頼している。読了後『イトウの恋』を再読したくなった。読めて良かった!2019/07/12
わっぱっぱ
51
記録というのは面白い。語られ尽くしたように思われている時代の中に、殆ど語られることのなかった場所があり、人がいて、正史から零れ落ちた時間を、景色を、そっと囁き続けている。文明開化の波に飲み込まれゆく日本の、今は失われた奥地の営みをバードは率直に綴っている。教科書や歴史ドラマには出てこない私たちの(それもかなり近い!)祖先の姿が見える。たった140年ほどの間で何という変化だろう。そして今が当時と比して豊かだと言い切れないのはどうしたことだろう。 アイヌの暮らしを身近に知ることが出来たことも貴重。2018/02/16