内容説明
強靱な思考と生によって絶大な吸引力をもつ哲学者・ウィトゲンシュタイン。無数の断片が織り重なるそのテキストを、独自の切り口と一貫した姿勢で再構成した、名アンソロジー。
目次
1 言語と世界―『論理哲学論考』から
2 数学の基礎をめぐって
3 言語・行為・生活
4 「私的言語」批判
5 語られず示されるもの
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
32
彼の本を読むのは久しぶり。高校三年の頃から関心を寄せてきた。前期と後期で哲学の姿勢や課題が変貌したとされるのが、黒田氏の研究などもあって、一貫して追求しているテーマがあるとされてきた。それは語りえることと語りえないことの峻別。およそ哲学者が語ることは明晰でなければいけないし、何を語っているか分かっていなければいけない。痛みは語り得るか。私の痛みなる考えは示せるか。存在しないのか。2019/04/04
白義
19
「語られること」と「示されること」を焦点に、ウィトゲンシュタインの思索を分かりやすく編集、配列した、入門にも整理にもぴったりのアンソロジー。第2章「数学の基礎をめぐって」が秀逸で、数学記号の意味は計算における使用である、という部分から、論考から探究への移行がシームレスに読み取れるようになっている。そして、私的言語=独我論の解消を経て、論理と生、「語られること」と「示されること」が和解する、とその一貫性と順調な発展が見渡せ、その全体像を掴みとれた。直接論考や探究を読む前に読むのがいい2013/07/22
ハイちん
4
これまで読んできたウィトゲンシュタインの解説本をカヴァーアルバムとするなら、本作はベストアルバムとなるだろう。「草稿」から「論考」「探求」「確実性の問題」まで。ウィトゲンシュタインが生涯に渡って取り組んだ問題の中から特に重要な物を原典からそのまま(日本語だが)抜粋、編集してある。個人的には文庫化されていない「探求」の原典の一部に触れられたことが良かった。2015/04/28
Omelette
4
ソシュールを読んでいると、しばしばウィトゲンシュタインを思い出す。黒田亘『経験と言語』によれば、両者の直接的な連絡を示唆する研究もあるようだ。とりわけ関連が深いのは私的言語批判以降の後期思想だが、後期思想を理解するためには『論考』を読まなくてはならず、そこでそれらが一冊にまとめられたこのハンディなアンソロジーをふたたび紐解いた。黒田氏のサジェスチョンに従って読んでみて、あらためて感じたのは、『論考』に秘められたいちばん深い思想は「人間に共感する能力のあることのフシギ」ではないかということ2010/05/29
bittersweet symphony
3
ヒトは分かり合えない動物で、分かり合っていると思っているのは幻想に過ぎないんだと手を変え品を変え語り続けている。分かった気になっていては間違うのである。2018/02/14