感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Aster
66
ウィトゲンシュタインはまるで映画の中にいる人間のようだった。物事に対するストイックさは半端では無い。ただ、その病的なまでのストイックさを受け入れてくれた人たちがいたというのも大きいと思う。人との関わりを大切にしたウィトゲンシュタインだからこそ受け入れられたのだろう。自分の殻に篭ろうとしない姿勢も素晴らしいと思った。哲学を理解する前にその人となりを見ることは重要ですね。理解がまるで違ってくる。面白い本だと思って買いましたが、期待通りでした。2020/10/22
踊る猫
31
奇人変人……というイメージがあったウィトゲンシュタインなのだけれど、この彼に関する回想録を読んだ限りでは確かに常識人ではなかったかもしれないが、誠実な学徒でありストイックな思想家という印象を受けた。その分ゴシップを目当てに読んだ私のような読者からすると拍子抜けでもあったし、ウィトゲンシュタインのイメージを無難な良い人に固めてしまうのではないか、という危惧も感じる(いや、かなり本書の中の彼もぶっ飛んではいるが)。彼の態度から学ぶべきは、奇を衒うことではなく常識/定石であっても己の思考を貫くことではないか、と2020/01/05
テツ
26
日本のある著名な哲学者の方が若かりし頃にウィトゲンシュタインを評して「狂った外人の思考なんて理解できるか!」と宣ったという話を思い出した。何というか人として許された思考の力、思考の枠組みを越えて思考を続けてしまったために破壊されたという感じ。破滅への道を歩み続ける天才の姿は悲劇的だけれど強烈に格好良く見える。平々凡々な僕ら一般人には生涯到達し得ない脳髄の奥底ってきっと存在するのだろうし、そこを覗いてしまったら無事ではいられないんだろうなきっと。2018/07/02
ステビア
25
ヴィトゲンシュタインの人間的な側面がわかる優れた回想。思いやりにあふれた著者への書簡が印象に残る。2022/09/04
kochi
21
ヴィトゲンシュタインはウィーン生まれの論理学者・哲学者。2度の大戦を経験し、ケンブリッジの哲学教授となる。本書は、ヴィトゲンシュタインと公私ともに親しかった著者マルコムが、ケンブリッジでの講義の様子や人となりを記す回想が中心で、他に遺稿整理にかかわったフォン・ライトによる小伝を含む。マルコムの回想で描かれるヴィトゲンシュタインは気難しく、一言でいえば、かかわりたくない性格のように思えるが、映画やミステリ好きだったという意外な面も記され、20世紀最大の哲学者の一人の生涯をコンパクトながら知ることができる。2019/05/01