感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hatohebi
3
筆者は「風流夢譚」について「人間宣言をしながら象徴という抽象の高みに上らざるをえなかった天皇という存在、天皇制という制度のパラドックス」「天皇=皇族の人格という問題」(p102)を提起したものとしている。これには異論がない。個人的にはここに中野重治「五勺の酒」の「どこに、おれは神ではないと宣言せねばならぬほど蹂躙された個があっただろう」という言葉を繋げたい気がする。2019/08/13
justdon'taskmewhatitwas
2
とある小説が雑誌に掲載され、非合理な暴力が介入し、第三者が殺傷された事件。この本で当時編集者であった筆者は、手離した言論・表現の自由の奪還を型通りに奉じたりせず、負傷者を見舞った際言葉を失した経験、自責の念を基準に事の顛末を振返り述懐します。当時の、威丈高になった加害者に被害者が萎縮し世間に詫びる様、手打ちと称し是非もなく口利きする某広告代理店などの事象は、今で言う"自粛""中抜き""密約"等と通じるもので、妙なザワめきを覚えます。2023/03/31
manmachine
2
事件当時、中公編集部内にいた者からの、生々しいドキュメント。2009/10/26
1
そして「不敬文学」は不可能になった。恐らく、今でもそうだろう。「タブーに挑戦」を気取った馬鹿者もこの領域は不可侵なのだ。何が「タブーに挑戦」だ。笑わせるなよ。この「不敬文学」の系譜を辿る渡部直己の『不敬文学論序説』は併読必須。2017/04/14