出版社内容情報
フランス啓蒙思想の金字塔『百科全書』。全28巻に及ぶ、この壮大な出版プロジェクトの全貌と、編集長・ディドロの八面六臂の活躍を、精緻で生き生きとした分析により描き出す大著。
内容説明
ディドロが追い求めた「共感の唯物論」へ―18世紀フランスが生んだ、世紀の大事業『百科全書』は、いかに生まれたのか?そして「編集長」を務めた思想家ディドロと「結社」の仲間たちが夢見た世界へのまなざしとは?膨大な資料と最新研究を博捜、多彩な図版を駆使して、壮大な出版プロジェクトの全貌と未来を生き生きとした名調子で描き出す。第一人者による畢生の大著。
目次
第1章 『百科全書』前史
第2章 『百科全書』刊行史
第3章 編集者ディドロの生涯
第4章 商業出版企画としての『百科全書』
第5章 『百科全書』編集作業の現場
第6章 「結社」の仲間さまざま
第7章 協力者の思想と編集長の思想
第8章 図版の世界
第9章 身体知のなかの図版
著者等紹介
鷲見洋一[スミヨウイチ]
1941年生まれ。フランス文学・思想・歴史。慶應義塾大学名誉教授。慶應義塾大学大学院博士課程修了、モンペリエ大学大学院博士課程修了。文学博士。慶應義塾大学教授、同大学アート・センター所長などを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
20
『百科全書』の編集に携わったディドロの活動を通して18世紀フランスの出版事情や王権と宗教界の関係なども著述。出版統制や宗教界からの圧力、事後検閲など厳しい環境の中での刊行だったようだ。ディドロが多種多様な分野から執筆協力者を集め、専門家のネットワークを築き上げる。ここで「諸意思の協調」とそれを支える「身体的共感」として政治学と生理学を結びつける議論展開がなされる点に注目。◇かなりハードルは高い、ただ学術書としての体裁ではなく脚注も省略されているので、本を抱えて都度巻末を確認する作業がなく腕は楽だった。2022/10/15
志村真幸
1
895ページという驚きの厚さである。しかも、ほとんど書き下ろしらしい。著者の研究人生の集大成となる一冊だ。 ディドロと『百科全書』について、最新の研究状況から、いまわかっていること/問題とされていることが順序立てて解説されていく。 ディドロとはどんな人物だったのか。編集と発行の過程。図版をどのように読み解くべきか。政治問題との距離感はどうなのか。 いずれも重要な問題であり、非常に明確に論じられており、説得力もある。 厚さが気にならないだけの魅力と読みやすさ。読み終えて、腕が疲れているのに気付く。2023/09/18