出版社内容情報
日本人2人目のノーベル賞を受賞した朝永は、当代一流の粋人だった。飄々としたユーモアと平和への真摯な姿勢に満ちた珠玉の24篇。
朝永 振一郎[トモナガ シンイチロウ]
著・文・その他
内容説明
ふしぎだと思うことこれが科学の芽です―ノーベル賞物理学者の粋と洒脱、そして平和への願い。
目次
鳥獣戯画
庭にくる鳥
ねこ
蚊・蚤・蝿・われら
なまいき
体育と私
武蔵野に住んで
西田町一丁目
父
私と物理実験〔ほか〕
著者等紹介
朝永振一郎[トモナガシンイチロウ]
1906~1979。京都第一中学校、第三高等学校、京都帝大理学部物理学科を卒業。昭和7(1932)年、理化学研究所の研究員に着任。昭和16(1941)年より東京文理科大学(のちの東京教育大学、現筑波大学)教授。戦後すぐプリンストン高等研究所に滞在。東京教育大学長も務めた。昭和40(1965)年、くりこみ理論による「量子電磁力学の発展への寄与」により、湯川に次いで日本人二人目のノーベル賞(物理学賞)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
80
ノーベル物理学賞を受賞した朝永振一郎氏のエッセー。小難しくなくて寧ろ、分かりやすく、おおらかな朝永氏の人柄が伺えます。巻物状で手に入れたかった鳥獣戯画への深い愛着ぶり、「なまいき」という言葉に託した次世代への敬意、幻灯機作り、一家の愛猫の思い出話が微笑ましい。そして湯川秀樹氏やアインシュタイン博士に対する引け目や大学の講義が存外、窮屈なのでさぼった事、雨で体育が無くなった事で喜ぶ姿などはなんとも人間味があって親近感が湧きます。放射能汚染について科学者のあるべき姿を述べたエッセーには頭が下がるだけです 2017/02/05
うーちゃん
27
日本人二人目のノーベル物理学賞を受賞した、朝永振一郎のエッセイ。超多時間論を基にくりこみ理論の手法を発明、量子電磁学の発展に寄与したそう。なるほどわからん。とにかくそんなすごい人の書いたエッセイだから、難しいのかなと身構えたけど、このかた、素晴らしい書き手でもいらっしゃる。飼い猫のこと、武蔵野の風景のこと、父親のこと、物理についての思いなど、スマートで美しい文章で、とても面白いエッセイだった。何の分野においても道を極める人というのは 頭脳が豊かなだけでなく、人間性やこころが豊かなんだなあと思った。2017/01/08
わっぱっぱ
26
自然体で、人間味を感じさせる随筆。朝永氏は科学研究において天才的な資質を持っていただけでなく、優れた書き手でもあったようで、回想文などはとりわけ情趣に富んでいる。科学というとつい、客観的で、数字的で、機械的なイメージを抱いてしまうのだけれど、先に読んだ湯川氏も語っているように、詩も科学も実のところ、出発点と行き着く先は同じなのではないか、ということがおぼろげにも分かる気がする。鳥獣戯画や動植物、故郷などへの愛情の寄せ方に好感を抱く。何というか、頭もだけど、心が柔らかい人なのだな。2017/07/08
naotan
20
ファインマン先生と同時にノーベル賞を受賞した人だっけ、というくらいの認識で手に取ったけど、朝永先生も負けず劣らず素晴らしい人ではないですか! 個人的にツボッたのは、先生の言われる黒人街に私は住んでいるようです。2018/11/28
アドソ
19
朝永振一郎博士の数あるエッセイの中から、特にわかりやすく面白いものを集めた好企画。初めて読むものも多かった。飾り気がなく素朴で正直で、理想の科学者像であるばかりか、まず人間としてすごい。控えめでありながら過度に謙遜することなく、悲観的でありながら悲壮感がない。本当に優れた人とはこんな風なのではないか。博士の時代に比べて科学のいろんな分野で研究は発展し規模も大きくなったけど、研究者の抱える悩みはほとんど変わっていないのではないか、と思ったり。2017/03/19