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出版社内容情報
昭和の戦中。広島市から軍都呉市に嫁いだすずは、不器用ながら北條家に徐々に溶け込み日々を過ごす。やがて戦争の暗雲が周囲を色濃く染めていく。大空襲、原爆投下、終戦。歴史の酷い歯車が一人の女性の小さな世界をゆがませていく。そして…。読む者の心を揺さぶる最終巻!
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
海猫
448
この作品を抑制のきいた表現が素晴らしいと思って読んできたが、下巻になるとその抑制を振り切って叫んでいるかのような描写が多々あり、畏怖する。一方で冷静に提示する表現がどっしりとあるのが深みと言えよう。全編読み通しはしたが、一度で消化できたとはとても思えずまた何度となく読み返したい。2016/11/17
bookkeeper
227
★★★★★ 下巻は感想が一番書きにくい。見舞いに行くシーンに差し掛かると辛い。お見舞いに行かなければ、晴美さんにねだられてあちらに行かなければ、それとも塀の割れ目に飛び込んでいたら…。 可愛い絵柄とほんわかした雰囲気ながら、とても深い伏線や技巧を凝らしていることが分かってきて、この感想で良いのか、と思ってしまう。特に最後の「しあはせの手紙」。 でもきっとすずさんも作者さんも、難しく考えなくてもいいよと言ってくれそうな。最後に歪んでいた世界が、ぱぁっと色彩と輝きを取り戻せて、すずさん、良かったね。2018/04/15
またおやぢ
192
再読。「夕凪の街 桜の国」の読了後にも思ったのだが、こうの史代さんの作品には歌を感じる。それも柔らかく、静かで、それでいて熱のこもった人間に対する尊重と優しさを伝える歌。映画はまだ見ていないが...もう一度読み直してから観に行くことにしましょうかね。はい。2016/12/01
えちぜんや よーた
167
すずが突っ伏して大粒の涙を流したシーン。それが「この世界の片隅に」自分の居場所を見つけられたきっかけだった思う。「銃後の守り」のお手本だったすずが、本当の思いをさらけ出す。居場所を見つけてもらったのではなく、自分で見つけた。戦時中の話だったけど、これはいかなるテーマにも当てはまる。家族との別離、身内の不幸、病気、リストラ、いじめなど数えだしたらキリがないほど、現代社会は不安だらけ。北條家は「普通でない人」の集まりだけど、それでも自分の居場所は必ずある。だからこそ世代を超えて支持を集められたんだと思う。2017/01/17
しいたけ
151
「あんたが生きとってよかった言われるが どこがどう良かったんかうちにはさっぱり判らん 歪んどる」失くした右手。左手で描く世界は歪んでる。拙い手を使い涙を押し込めて、すずは、日本人は、この世界をまた実直に描いてきた。自分がなぜ生き残ったのかわからないという。ただ「もう会えん人が居ってものがあって うちしか持っとらんそれの記憶がある」「うちはその記憶の器としてこの世界に在り続ける」大袈裟なのは承知している。それでも日々に小さな戦いがある。負けるわけにはいかない。器の私が輝くことで、光が当たる大切な記憶がある。2017/01/11