内容説明
「この雑文集には私のナマの姿がかなり濃厚に反映している。性格的なものや自らの体験や育ちがかなり反映しているということだ」(あとがきより)自分を語り、作品を語り、時代を語る花村万月。思索と感情、そして微妙な韜晦。新芥川賞作家の自伝的初エッセイ集、待望の文庫化。
目次
1 笑う萬月(因縁;猫;脱肛 ほか)
2 島へ(日本海最北端ツーリング;島へ;押し売りを待ちわびる老人たちの話)
3 どんなモノだ!(サバイバルナイフ;オートバイ;ギター ほか)
4 目下、ごひいき(収支決算;真鍮色したコンドーム;角文ストア ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
11
「人は性の快感をそして薬物で得られる快感を、いわば快感全般をどこか後ろめたいと感じ、密やかな闇におしこめて涼しい顔をしている。だからこそ性は文学の重要なテーマになり得る・・・(p198)」、と。文学では性表現が露骨だったり、人間の闇を描くケースが目立つのはどうしてかな?と思っておりましたが、なるほどこれが一つの理由なのですね。堕落論(坂口安吾)では文学の目的は人間性の追求、と述べられており、そのためには「性の快感」や「闇」というのは格好の材料ということなのでしょね。2016/12/03
ehirano1
8
再読。「<すこし考えること>がエンターテイメントの本質であり、読書の本質であると考えている(p241)」には同感です。また、あとがきの項では「・・・雑文を書き続けるだろう・・・。雑文は私にとってかなり直観的なもので、自分に対する反省材料になる・・・(p270)」とあり、読む(input)、考える/書く(output)はセットであることを再認識できました。総じて本書は垂れ流しのエッセイが多いですが所々異様に光を放つエッセイがあり本書は侮れません。読めば読むほど分かってくる面白みを再読で感じました。2016/09/17
ehirano1
7
「眠り猫」の解説で本書は“著者の自伝的エッセイ”と紹介されていたので興味を持ち読んでみました。萬月氏の(幾つかの)著作の背景や著者の文学や小説に対する思いやその基点を垣間見ることができます。また業界の小話があったりして結構興味深いです。2016/09/03
Ichiro Toda
4
花村萬月のエッセイ集。たしかになあと思うような著作に関する話もあれば、こういうこと書いちゃっていいんだろうかというギリギリなところまでがつがつ収録されている。エッセイ集は初めてだけど、まあそういう人なんだろうなあという感じがそもそも作品自体から感じられるのでギャップはないものの、それでもちょっと突き抜けているように思った。音楽に関する話が個人的に好きでした。2015/08/03
Katsuto Yoshinaga
2
花村氏の著作をときどき無性に読みたくなる。先日の夜遅く、「ブルース」を読み返そうかなと手にとったところ読む手が止まらなくなり、平日だったのであわてて本を置いた。これまで雑誌等で著者のエッセイはいくつか読んでいたがまとまった著書は初めてである。小説作品とは趣を異にするタッチの多いが、これはこれで楽しめた。音楽やバイクに関する薀蓄がちょっと鼻につくなと感じていたが、あとがきで自嘲されている。やはり萬月氏はいい意味で常識人だと再認識。また、解説で山田詠美氏が書いているように、本質的に良家の方でもある。2014/10/26