感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白義
14
呉智英のデビュー作にして最高傑作。以後の彼のエッセンス全てが詰まっている。封建主義という言葉を持ち出して我々が毒されている西洋近代・民主主義イデオロギーを批判、相対化し、それに抑圧されていた豊穣な世界観を明らかにする、という構成。この封建主義というのが今まで省みられなかった前近代の知恵と東洋思想的なもので、その世界をより楽しむ学問書の、素晴らしいガイドにもなっている。本人は拒絶するだろうが、論法が完全に俗流ポストモダンのそれなのが興味深い。ポストモダンとプレモダンの結合の典型例とも2012/12/15
双海(ふたみ)
12
近代民主主義に本源的な異議を唱え、代わって封建主義を説く呉氏。2014/09/29
うえ
8
「切り捨てられたアジアは、儒教は、封建主義は、本当にカス同然のものとして、進歩的近代主義者にも保守的近代主義者にも忘れられてきたのである。だが、今や、福沢に始まった近代主義・民主主義は…明白に破綻し、行きづまりを見せている。保守派はそれでも権力当事者のリアリズムで、それを糊塗し乗りきるかもしれない。だが、進歩派までもが保守派と同じ論理を用いるのであれば、権力も取っていないのに、どうして新しい地平を切り開くことができるのか。」2018/02/14
或るエクレア
8
封建主義時代の名君とかについて書かれているんだろうと思って借りたが全然違った。しかも80年代出版と結構古く文体に時代を感じさせる。しかしこの本で言われていることは決して古く無く、今でも通ずるものがある。むしろ我々の社会が何も成長していないのではないかとすら思える。つまり民主主義をゴールと勘違いし、絶対視しているのではないか。だが封建主義がどういうものかイマイチ説明できていないのでいくら民主主義の欠点を叩いてもなんかしっくりこない。面白くはあるんだけどね。2015/10/14
anarchy_in_oita
7
大したことを言っているわけではないが僕は好き。当時のアカデミズムとジャーナリズムが唱えていた自由や平等のお題目は、いかに表層的であったか。彼がコミカルな筆致で書いていて命拾いしたな、と思う。自由には貧乏になる自由も含まれる、と冗談抜きで主張される昨今、彼の言葉に真摯に向き合わなかったツケが回ってきているように思えなくもない。なお、しれっと文末の参考文献と、それに付したコメントから読んだ感が伝わってきて好感が持てる。2020/06/28