内容説明
旧幕臣の娘である去場安は、岩倉使節団の留学生として渡米した。帰国後、日本にも女子教育を広めたいと理想に燃える安のもとに、伊藤博文から手紙が届く。「盲目で、耳が聞こえず、口も利けない少女」が青森県弘前の名家にいるという。明治二十年、教育係として招かれた安はその少女、介良れんに出会った。使用人たちに「けものの子」のように扱われ、暗い蔵に閉じ込められていたが、れんは強烈な光を放っていた。彼女に眠っている才能をなんとしても開花させたい。使命感に駆られた安は「最初の授業」を行う。ふたりの長い闘いが始まった―。
著者等紹介
原田マハ[ハラダマハ]
1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。伊藤忠商事、森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館勤務を経て、2002年にフリーのキュレーターとして独立。2005年『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞。2012年『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
467
原田マハ版ヘレンケラー。感涙作です!現代でも三重苦の子供がいたら極めて大変だと思いますが、明治時代の田舎は想像を絶する世界だったのではないでしょうか?2014/11/06
yoshida
424
原田マハさんの作品の中でも屈指の作品だと思う。ヘレン・ケラーとサリバン先生を日本に置き換えたオマージュ作品。三重苦の少女れんに、人として実りある生涯をもたらした去場安。初めは安はどのようにして、れんを導くのか想像がつかず。安の全身でれんに向き合う姿に感銘を受けた。また、れんを囲むひさ、そして初めての友人のキワの存在のなんと大きいことか。れんが水を思いだし、言葉を発する場面、また、年老いたキワの三味線と歌を聴きにれんが現れる場面に深く感動した。人間の持つ可能性、そして諦めない気持ちの大切さを感じた名作。2017/03/25
takaC
317
タイトルがそのまんまなのも、去場安=アン・サリヴァン、介良れん=ヘレン・ケラーという安直なネーミングなのも、オリジナルをベースにしつつもボサマの旅芸人狼野キワを重要人物として登場させて、れんとキワの心のつながりを幹とする物語としたところに独自性があるという作者の自信の現れなのか。実際、サリヴァン先生の物語の二番煎じという印象は十分薄く、独自性のある味わい深い小説だったと思う。ヘレン・ケラーを知らなければ気付かないだろうし。ただ、そういう意味では最後の『みず』のくだりはわざわざ入れなくても良かったかも・・・2015/08/26
ダイ@2019.11.2~一時休止
316
ヘレンケラーの原田さんアレンジ。最後は原田さんらしい終わり方でイイ。でもれんの成長していく過程とかキワのその後ももっと読みたい。続編で出ないかな?。2014/11/10
まちゃ
294
目、耳、声の三重のハンデを持った介良れんの家庭教師になった去場安。彼女の献身的な教育によって「れん」が言語を習得し、人間らしく成長していく姿を描いた感動作です。 津軽三味線の名手狼野キワと介良れんの70年ぶりの再会にジーンときました。 去場安は、まさに「The Miracle Worker」でした。2015/03/08