内容説明
チェスのチャンピオンにコンピュータが勝利してから13年、渡辺明竜王と「最強の将棋ソフト」ボナンザの激闘から3年、コンピュータがついにプロ棋士に勝った。歴史の扉を開けた2010年10月11日の戦いまで、その足跡を追う。人間の頭脳に挑む将棋ソフトはいかに進歩してきたのか。その指し手はどのように決定され、人間の思考とどこがどう違うのか。「読み」と「局面評価」はどのように行うのか。公開対局でプロ棋士に初めて勝利した激戦譜を辿りながら、今後の課題を考える。
目次
第1章 渡辺竜王との夢の対局
第2章 ディープブルーが勝利した日
第3章 将棋ソフトが進歩してきた道
第4章 「手を読む」と「局面を評価する」は違う
第5章 局面をどう評価するか
第6章 清水市代女流王将vs「あから2010」
第7章 名人に勝つ日
著者等紹介
岡嶋裕史[オカジマユウシ]
1972年東京都生まれ。中央大学大学院総合政策研究科博士後期課程修了。富士総合研究所勤務を経て、関東学院大学准教授。情報ネットワーク論担当(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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佐島楓
49
将棋とプログラミングの両方がわかれば面白い本なのだろう。コンピュータに人間的なプログラミングもできるというところが興味深かった。2016/03/17
Kaz
8
コンピュータと人間の対決には、血の通わない戦いという印象がある。しかし、コンピュータに命令を下している(データを打ち込んでいる)のは人間であり、人間対人間の戦いなのだと、本書を読んで感じた。そして、人間同士の戦いならば、過去のデータを機械に蓄積させているコンピュータの方が有利なのは当然で、平等な勝負ではない。双方ともにそんなことは百も承知で指しているであろうし、例え名人に勝っても「だからコンピュータが名人だ」ということにはならないであろう。将棋の面白さの可能性を広げるという意味で大変興味深い内容だった。2014/01/30
由良
7
著者の意に反するとは思いますが、システム開発に携わっている人や、それを仕事にしたいと思っている学生さんにも是非読んでもらいたい本でした。コンピュータにできる事・できない事が分かりやすく解説されており、また、「人間のような思考」を再現する為の技術者の試行錯誤や、複数の将棋ソフトによる合議、多数決を行う「あから」の話が非常に面白かったです。ソフトとしての今後の課題などは、非常に参考になりました。「あから」と対局後の清水女流の言葉に、不覚にも泣きそうになりました。2013/05/08
Humbaba
7
コンピュータの黎明期には,人間が負けるなどは全く考えられないことであった.コンピュータはルールを違反しないのがせいぜいであり,定形から外れたときには全く対応できなかった.それがたった10数年で,並の人間に勝つどころか,プロに対してすら勝負ができるようなレベルになった.今後コンピュータはさらにレベルアップが可能であるということを考えれば,トッププロがコンピュータに敗れる日も,私たちが生きている間に来るだろう.2011/03/07
文章で飯を食う
5
かなり端折った書き方のせいか、とてもわかりやすい本。著者のまとめる力を感じました。 コンピュータが人間に勝つには、後は、現在の線上を押し進めれば良いだけで、時間の問題でしょう。 この先、人間の考えることのパートナーができそうで、楽しみなことである。2011/10/12