出版社内容情報
「公園に垂れ下がる色とりどりの鯉のぼりに、一つだけ人間が混じっている。」一行のみで綴られる、奇妙で恐ろしい珠玉の怪談小説集。
内容説明
一ページに一つ、一文の物語で構成される怪談小説集。「公園に垂れ下がる色とりどりの鯉のぼりに、一つだけ人間が混じっている。」「寝る時に必ず、洗濯機を回し続けることだけは忘れないよう願いますが、それさえ守ればたいへんお得な物件だと思いますよ。」―想像力が喚起され、不思議な怖さが込み上げてくる怪談を二百近く収録。現実と空想の境目を見失うような、奇妙で恐ろしい世界を味わえるだろう。
著者等紹介
吉田悠軌[ヨシダユウキ]
1980年、東京都生まれ。怪談、オカルト研究家。怪談サークル「とうもろこしの会」会長。オカルトスポット探訪マガジン『怪処』編集長。怪談の収集や国内外の怪奇スポットの探訪をライフワークとし、雑誌・WEBでの執筆やテレビ・イベント出演など精力的に活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夢追人009
213
題名のない一行で表された怪談の死ではなく詩みたいな作品集の一冊です。これは実話ではないですが、まあ理屈とか深く考えずにサラリと読み進めて作品の世界観をそのまま受け入れるのがいいでしょう。「天井の四隅に同時に目をやれば、どこかで子供が一人死ぬ。」と言われても人間の目は2つなので現実には不可能でしょう。「産まれおちた我が子に触れようとした瞬間、背後の看護師から、その子が亡くなる年月日をそっと耳打ちされた。」そんな事どうして知ってるのよ!「5メートル超す老人の自転車が、よく首都高を逆走している。」そんなアホな!2020/10/31
sin
112
思い描く怖さは一枚の写真を連想させて鮮烈ではあるけれど、まるで怪談の大喜利のようで、きっと配られるのは座布団ではなくお皿…「いちま~い、にま~い…」一枚足りない。2017/08/03
里季
82
怖いというより気味悪いといった方が当たるような気がする。一行というが厳密には一文だ。3行くらいに長いのもあるがやはり1ページに一行ポツンと書いてある方が怖い。ただ、これは身が震えたというように怖いものはなかった。この歳になるとめったなものでは怖くもなんともなくなるのだ。その現実が一番恐ろしかった。2018/05/24
タイ子
76
ゾワリ!でも、思わずクスっ笑ってしまう数行の話。恐怖と笑いは表裏一体ですね。ありそうでなさそうな、いやいやありえへん!みたいな・・・上手いわ~、作りが。「あおむけで昔の人を思い出していると、とんとん、背中を叩かれた」これからはうつぶせで思い出そう(振り返れない;)第2弾も読まなくっちゃ。読友さん、ありがとう~♪2019/07/03
HANA
71
このような暑い日に怪談本を読んでいると、滲んだ汗が行方不明の友人の顔になるので、彼がまだ沼の底に沈んでいることがわかった。一行だけで語られる怪談の数々、一つ一つが短いだけに語られぬ部分が恐ろしくなる。この余韻、いいなあ。以前『怖い俳句』を読んだ時にも感じたが、怪談に短文と言うのは実に合った形式ではなかろうか。短くなればなるほど、言葉が凝縮されるように感じる部分もあるし。しかし玉石混交な部分もあるし、短い文章を本と言う形で一気に読むと一つ一つの衝撃も薄れている。ただこういう形式は面白いので二弾も期待したい。2017/07/21