内容説明
恵美押勝が討伐されて一年近く―。淳仁天皇を廃した孝謙上皇が帝位に返り咲き、再び内裏に訪れたかに見える平穏。その裏には、女帝を誑かし、陰で政治を操る怪僧・弓削道鏡の存在があった。黄金眠る陸奥に食指を伸ばし、帝位さえ脅かし始める飽くなき道鏡の欲望、その阻止を図る牡鹿嶋足、物部天鈴らの奇計妙策の数々…。蝦夷の存亡と誇りを懸けた、新たなる戦いを描くシリーズ第三弾。
著者等紹介
高橋克彦[タカハシカツヒコ]
昭和22年(1947)、岩手県生まれ。早稲田大学卒。昭和58年、『写楽殺人事件』で江戸川乱歩賞を受賞し、文壇デビュー。昭和61年に『総門谷』で吉川英治文学新人賞、昭和62年に『北斎殺人事件』で日本推理作家協会賞、平成4年に『緋い記憶』で直木賞、平成12年に『火怨』で吉川英治文学賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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レアル
57
押勝の次は道鏡!と宇佐八幡の信託で道鏡の思い通りとならなかった辺りで物語が終わる。物語の舞台はまだ都。大和朝廷時代は大好きな時代で読んでいて楽しいし、天鈴や嶋足らの智略に満ちた物語も爽快だけど、欲を言えばもう少し蝦夷のこの時代の物語を読んでみたいかな。でもこの時代藤原カラーが国を治める事が多い中、道鏡という非藤原が治めた貴重な時代で、非藤原Vs藤原の構図を読めたのは面白いし、この後道鏡の行方と共にこの構図が表面化されるのだろう。史実の隙間を埋めるオリジナル物語、面白い!2018/05/26
財布にジャック
53
まさかいきなり前巻で幸せそうだった嶋足に、こんな運命が待っていようとは予想外で受け入れがたかったです。天鈴は相変わらず敵を騙すことに全てをかけているようなキャラクターとして描かれていますが、道鏡も凄く腹黒く罠を仕掛けるのが巧いので、見ていてハラハラドキドキの連続です。まさしく狐と狸の化かしあいでした。いつの世にも歴史はこうやって動かされてしまうのだと思うと、頭の良い人、運の良い人、そして非情になれる人が有利だと認めざるをえません。主人公達が道鏡にどう立ち向かうのか次の巻も楽しみは続きます。2012/10/05
藤枝梅安
22
道鏡は恵美押勝を亡きものにし、上皇に取り入って実権を握る。陸奥の金を狙う道鏡に対し、道鏡の関心を都に集中させようとする天鈴が動く。蝦夷の平安のために手段を選ばない天鈴の知略に周囲も不安を抱きつつ従っていく。淡路に流された淳仁天皇の最期や、和気清麻呂の大宰府への急行など、昔、名前だけは覚え(させられた)人物を筆者が現代の視点で蘇らせている。嶋足の弟・三山の今後の動向が気になる。2011/02/02
めい
17
よっぽど事実を曲げないかぎり空白部分を自由に書いていいのは歴史小説のお約束だけど、流石にここまで色んな政治事件に嶋足と天鈴が手を引いてたというのは???となる(分かっていたこととはいえ)。どんどん蝦夷からも遠ざかるし。とはいえ最後の展開は良かったし、物語としては面白いので次の展開を期待。2020/02/15
にゃこ
15
今度は道鏡か! と思えばスタートから悲劇過ぎる。ちょっと待て、すごい出鼻をくじかれたような。これからは道鏡に対する私怨で動いていくのかな?だとすると少し嫌だ。でも、ラストは良かった!私も慌てふためく道鏡と浄人の顔が見たかった(笑) 道鏡もそろそろクライマックス。そして嶋足はいつになったら蝦夷のための大活躍をするんでしょう?次巻早く読みたい!2016/10/09