出版社内容情報
戦争が終わったら、アンナは新しいオーバーを買ってもらうことになっていた。でも戦争が終わっても、お店はからっぽ、オーバーも食べものも、なんにもない。そこでお母さんは…? 第二次大戦後、ほんとうにあったお話。●第36回課題図書/厚生省中央児童福祉審議会推薦 小学校低学年~
内容説明
戦争が終わったら、アンナは、新しいオーバーを買ってもらうことになっていました。戦争は終わりました。でも、お店はからっぽです。オーバーも、食べ物もなんにもありません。アンナのオーバーを手に入れるために、お母さんは、どうしたのでしょうか。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちゃちゃ
104
真っ赤なオーバーを着た表紙の少女。温かそうなオーバーに身を包んで誇らしそうに微笑んでいる。戦争が終われば、オーバーを新調してくれると約束してくれた母。けれど物が不足しお金も乏しい中で、容易に買うことも作ることもできない…。家にある貴重な品々と交換し、何人もの人の手を借りて一年越しに出来上がったオーバー。子を想う母の愛、人々の善意、そして何よりも完成を待ち望んで待ち続けたアンナの辛抱強さ。クリスマスの日、街を雪が覆っても寒さを忘れさせるほどあたたかいオーバーは、人の温もりと心の豊かさを象徴するかのようだ。2022/12/21
nico🐬波待ち中
93
物語の始まりは戦争の話で少し暗いトーン。お金も食べ物もないのに、母親が戦争が終わって最初に買いたい物は娘の新しいオーバー。お金がないからと家にある金時計等を惜しげもなく差し出してオーバーを作るための材料や仕立て代にあてる。母親の太っ腹な心意気は実にカッコいい。そして母親からの依頼を快く受ける大人達も優しい。クリスマスイブに、オーバー作りに携わった全ての皆さんをご招待。戦争が終わった直後は気分も暗くなりがち。けれどクリスマスパーティーは少女のために一肌脱ぐ大人達の優しさに溢れていた。温もりのある素敵な物語。2017/12/25
Willie the Wildcat
80
復興への希望。一歩一歩だが、皆で支えあい前に進む。母親の愛情と教えを、随所に垣間見る。ノンフィクションであるが故に、人間の強さ・優しさを感じる。絵も常に他人の温かみに溢れる。クリスマス・パーティの皆の表情が印象に残る。慈しみ、施し、優しさ、感謝・・・。唯一、パーティに父親がいないのが”現実”を知らしめている気がする。アンナの笑顔が救いでもあり、希望だと思う。2013/02/23
がらくたどん
74
深い赤色の暖かそうなオーバーを着て微笑む少女が描かれた扉を開くと雪に埋もれた瓦礫の街。配給だろうか?並ぶ人々。疎開先からの帰還だろうか?荷車を引く一家。それでも路の真ん中で寸足らずの青い上着を着た少女が元気に手を振り窓から身を乗り出す母親の声に応える。戦争が終わって物もお金も失った街で人々に残されたものは小さな子どもの笑顔に宿る光だけかもしれない。母親は少女のために戦火を凌いだ思い出の品で羊毛を贖い紡ぎや織や仕立ての技術を頼み、生産者や職人はその思いに精一杯応える。哀しみを希望でそっと覆った暖かな1冊。2022/12/14
ルピナスさん
73
待ちに待った戦争終結の時が来ても、世の中は物不足。小さくなったオーバーを新調したくても、モノが手に入らない状況の中、材料になる羊毛の毛を春に刈るのを待ち、糸紡ぎのおばさんに毛糸にしてもらい、夏にコケモモを摘んで染色し、はたやさんに布地を織ってもらい、冬に間に合うように仕立て屋さんが仕立ててくれて一年をかけ漸く一着のオーバーが完成。子供の成長に合わせてモノを新調するのは親の喜びでもあるが、戦争が終わって平和な世界を生きていく少女のこれからに沢山の善意ある大人が関わり幸せを共有するという、希望に満ちた一冊。2023/06/02