内容説明
近年、認知研究は、認知心理学はもとより他の多くの分野から関心を持たれ、急速な進展を見せている。本書はそのような趨勢を視野に入れながら、著者らがその基盤とする認知心理学の方法論を中心に、人間の興味深い認知機能の解明にアプローチしてきた研究の軌跡を示したものである。従来からの関心の中心であった個人に内在する記憶や言語、思考などの知的機能の解明はもとより、さらに広く他者をも含めた外界とのコミュニケーションの役割、あるいは意識と無意識の問題など、現代の認知科学が対象としている広範な領域を反映した新しい話題が取り上げられている。従って認知研究者にとって、本書は現代の認知研究の紹介にとどまらず、将来の展開への羅針盤の役をも果たすであろう。
目次
記憶と意識をめぐる問題―外的記憶と想起のポップアウト
記憶の社会的側面―協同想起をめぐって
作動記憶とことばのメロディ
行為の記憶と潜在記憶
日常認知としての顔の記憶
語の表象と意味記憶研究
Wason選択課題が推理研究にもたらすもの
ろう者の言語と記憶に関する認知心理学的研究
バイリンガルの認知
潜在認知とステレオタイプ―その現代的意義
自己と記憶