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エクス・リブリス
かつては岸

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  • サイズ B6判/ページ数 260p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784560090343
  • Cコード C0097

出版社内容情報

韓国南部の架空の島ソラに暮らす人々、日本からの移民、アメリカ兵たちのささやかな人生。珠玉の連作短篇集。

【著者紹介】
1980年ニューヨーク生まれの韓国系アメリカ人作家。ウェスリアン大学卒。本書所収の短篇「そしてわたしたちはここに」で2009年度O・ヘンリー賞を受賞。

内容説明

「かつては岸」:島のリゾートホテルに滞在するアメリカの未亡人と、その給仕を務める半島出身のウェイター。それぞれ大切な家族を亡くした二人が抱える悲しみは、やがて島の岸辺で交錯する。「残骸に囲まれて」:1947年春。アメリカ軍による軍事演習が続くなか、島のそばに爆弾が投下される。行方不明の息子を探して、老夫婦は日本軍が遺棄していったトロール船に乗り、海に向かう。「彼らに聞かれないように」:今も現役で海に潜るベテランの海女アーリム。彼女のもとを、近所に住む日本人移民の息子が訪ねてくる。日本占領下の記憶を抱えるアーリムと、事故で片腕を失った日本人の少年は、世界や国籍を越えて心を通わせていく。「そしてわたしたちはここに」:関東大震災で孤児となり、日本から島の孤児院に送られた美弥。太平洋戦争後も島にとどまり、朝鮮戦争の野戦病院で働いている。そこに、かつて孤児院での日々をともに過ごした淳平が負傷兵として運び込まれたことをきっかけに、彼女の日々に変化が生まれていく。新世代の韓国系アメリカ人作家による、“O・ヘンリー賞”受賞作を収録したデビュー連作短篇集。

著者等紹介

ユーン,ポール[ユーン,ポール] [Yoon,Paul]
1980年、ニューヨークで韓国系アメリカ人の家庭に生まれる。2002年ウェズリアン大学を卒業、作家として活動を開始する。2005年、短篇「かつては岸」を発表、翌年の“ベスト・アメリカン・ショート・ストーリーズ”に選出される。2009年には、短篇「そしてわたしたちはここに」がO・ヘンリー賞を受賞。同年、第一短篇集となる『かつては岸』を刊行、全米図書協会が選ぶ35歳以下の若手作家に名を連ねた。ボストン在住

藤井光[フジイヒカル]
1980年大阪生まれ。北海道大学大学院文学研究科博士課程修了。同志社大学文学部英文学科准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

モルク

108
韓国系アメリカ人による韓国南部のソラという架空の島を舞台とした短編集。日本の占領下の時代からリゾート地となった現代まで、島という狭い空間で生きる寡黙な人々の失ったものへの愛着と生を描く。最初は読みにくさを感じるも次第にその静けさ懐かしさに惹かれていく。これはじっくりと読むべき作品。日本から孤児として送られてきた美弥が大戦後も島に残り野戦病院で働いていたがそこに孤児院で一緒だった純平に似た患者が…彼女の記憶が甦る、戦争そしてふるさと…を描いた「そしてわたしたちはここに」が好き。2022/09/20

アン

93
韓国南部にある架空の島を舞台にした短篇集8篇。ホテルに滞在するアメリカの未亡人と給仕が洞窟へ行く表題作、母親亡き後、牧場を手放す父親と娘の関係が愛おしい「わたしはクスノキの上」、孤児として日本から島へ送られた野戦病院で働く女性が主人公の「そしてわたしたちはここに」…。アリステア・マクラウドの『島』にインスピレーションを受けた作品もあるそうで、過去の記憶と現在の営みを通し、人々の心の機微を繊細に描いています。喪失や別離による孤独や心の空白、すれ違い。光り続ける星々と移りゆく時の切なさが心にしみる物語たち。 2020/01/29

minami

54
8篇の短編集。朝鮮半島のソラ島が舞台で、第二次世界大戦の頃の過去と現在という時代が2つの設定だ。それぞれのお話の読み出しに一瞬戸惑う。でもすぐに物語に引き込まれてしまった。自然描写がなんて美しいんだろう。こういう描写が多い物語は、なかなか想像力が追いつかなくて苦しい読書となる事もあるのに。でも全然苦にならなかった。時代によって戦争、日本からの移民、近代化した生活といろいろな人生があった。この人たちの心情がこれまた丁寧に描かれていて、そして先行きどうなるのかも気になる物語。ちょっと幻想的なのにリアルな物語。2022/09/07

ちえ

43
作者は韓国系アメリカ人。韓国の南に位置する架空の島ソラが舞台の短編集。静かで透明感を感じる文章を読みながら感じていたのは、どうしようもない孤独や寂しさ。信じていたもの、大切にしていたものが、ある日、気が付くと崩れていく。確かだと思っていたものが揺らいでいる。その感覚。それでも心の中がどれほど荒れていても、それを外には出さない、出せない。きっと傍目には何かが大きく変わったようには見えないだろう。どの話も密かな強さと絶対的な孤独を感じるものだった。言葉にはできない何かが確かに心の中に残った。2021/09/29

まさむ♪ね

37
訳者の藤井光さんが仰るように、この若い作家は言葉を絵筆のように使います。さしずめその絵は静謐さを湛える水彩画でしょうか。まずは太陽の光を反射して銀にきらめく蒼い海を描いた、その中央には白い砂浜がまぶしく縁取る島を、さらにその中央には緑が目にもやさしい山を描く。そして街の灯は淡くせつなく、残酷なまでに美しい。変えられぬ過去、変わりゆく今、ソラ島に生きる人々はあてもなくさまよい、悲しみにうたれ、幻の空を見上げる。時の炎はゆらゆらゆらめき、迷い込んだ洞窟の岩肌をうごめくように照らしながら闇の奥へと消えていった。2016/03/26

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