出版社内容情報
「神の肉」を食べたために知性が発達した犬とのインタビューをはじめ、ポップな感性から切り込んだ異色の連作短篇集。
【著者紹介】
アメリカの作家。著書に「Everything Matters!」など。
内容説明
「神の肉」を食べたために、知性が高度に発達した犬へのインタビューをはじめ、「神の不在」がもたらす「ねじれ」の諸相に、斬新な語りとポップな感性で切り込む。全米で話題騒然の新人による、異色の9篇を収めた連作短篇集。“ニューヨーク公立図書館若獅子賞”受賞作品。
著者等紹介
カリー,ジュニア,ロン[カリー,ジュニア,ロン] [Currie,Jr.,Ron]
1975年アメリカ・メーン州生まれ。処女作の『神は死んだ』で、優れたアメリカの若手作家に贈られる、“ニューヨーク公立図書館若獅子賞”を受賞する。2009年、初長篇のEverything Matters!を発表
藤井光[フジイヒカル]
1980年大阪生まれ。北海道大学大学院文学研究科博士課程修了。同志社大学文学部英文学科准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
巨峰
78
第一章で、アフリカの大地に若い女性の姿で降臨した神が本当に殺される。これが驚き。第二章以降は神が死んだあとの世界の混乱が描かれる。神の死体を食ってしまって中途半端に人間的になった犬たちへのインタビューが哀れ。なかなか斬新な設定で、ああ違う文化圏の人の小説を読んだなと思わせる。ただし、最後の3章はよくわからなかった。きっと合衆国にすんでいる方しかわからないのではなかろうか。2017/10/31
藤月はな(灯れ松明の火)
61
受肉し、地に降り立った神は爆撃によって実際、死んだ。神を救おうとして全てを捨てた殉教者であると同時に爆撃を行ったアメリカでの重要人物であったがために湯ユダであった人物、爆散した神の肉を喰らって生きた犬たちの生き残り、インターネット上の神に縋ることで親への不満と自己正当化しようとした青年、妊娠を拒んでいた恋人の発言に「是」と答える青年。「人はなぜ、分かり合おうとせずに同胞同士で憎み、争い、殺し合うのか」、「人は神という存在に依存する存在か」という永遠の問いである、人間の業を痛烈に、そして温かく、描いた作品集2014/03/05
けい
55
創造主である神がこの世に現れ、戦争に巻き込まれて死ぬことにより世界がどの様に変化していくかを合衆国の人々を舞台に描いた短編集。伊坂さんの「終末のフール」に通ずる世界観とも言えるが、騒乱初期からを短編で描きこんでいる分、表現にえぐい所が多い。最初は世界観に入りづらい面を感じましたが、一度入り込んでしまうと逃れられない状態となり、きっちり読まされてしまいました。読後感は悪くもなく良くもなく、なんか不思議な感じです。2013/09/07
かわうそ
30
神が死んでしまった世界で人はどのように生きるのかを描く連作短編集。宗教的・文化的背景への理解が乏しいため設定の妙を味わえていない部分もあると思うけど、全く異なるタイプの作品を集めた奇想系ディストピアSFとして非常に楽しかった。特に「神を食べた犬へのインタビュー」が素晴らしい。2013/05/21
かもめ通信
27
待ち構えていたのはニーチェどころではない思い切った設定。なにしろ「神」ときたらこの連作短編集の巻頭作品でもある表題作であっけなく死んでしまうのだ。著者の、そして訳者のうまさもあるのだろう、現在社会に対する痛烈な皮肉がこめられた重いテーマであるに関わらず、あれこれ考え込む隙を与えず最後まで読み切らせてしまう。だがしかしここに描かれているあれこれは決して「神が死んだ」ために出現した世界ではなく、信仰の如何に関わらず人間の存在そのものが愚かしいものであることを告発しているようにも思われた。 2019/09/27