出版社内容情報
「肉じゃがとステーキに見る日米文化の差異」「インドで犬に咬まれた私にインド人医師が与えたアドバイスとは」「ジュークボックスをはじめて見たアメリカのお母さんの反応は」等々、アメリカ小説の名翻訳家によるすこぶる愉快でためになるエッセイが満載。
内容説明
「肉じゃがとステーキに見る日米文化の差異」「インドで犬に咬まれた私にインド人医師が与えたアドバイスとは」等々、アメリカ小説の名翻訳家によるすこぶる愉快でためになるエッセイが満載。講談社エッセイ賞受賞。
目次
狭いわが家は楽しいか
アメリカにおけるお茶漬の味の運命
ハゲ頭の向こう側
礼儀正しさのパイナップル
天は自ら愛する者を助く
すてきな十六歳
…と考えるのは私だけだろうか
愛なき世界
ひじきにクロワッサンにうどんに牛乳
みやげ物の効用〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
193
第一線のアメリカ文学翻訳者・研究者であり、東大教授(現在は既に退官)、さらには村上春樹の盟友と錚々たる肩書の著者。これまでに訳書は何冊か読んだが、エッセイは初めて。雑誌に連載されていたものだが、実に軽妙洒脱。20年以上も前に書かれたのだが、全く古びることはない。アメリカ文学の楽しみや、また彼我の文化の違いを実に巧みに描き出す。「おいとけさま」のくだりなど、時には抱腹絶倒。アメリカ流のユーモアにフランス風のエスプリを加えたかのようだ。なお、タイトルの『生半可な學者』は、あまりにも謙遜が過ぎるというものだ。2014/12/11
どんぐり
73
1980年代後半から90年代前半に書かれた翻訳家柴田元幸の50編あまりのエッセイ。軽妙洒脱な村上春樹のエッセイに比べて、こちらはいかにも学者さんだなとわかる言語&文学&カルチャーエッセイ。「個人的70年代アメリカ辞典」にはジェームズ・テイラー、ジャクソン・ブラウン、ジム・クロウチのシンガー・ソングライターが出てくるけれど、この本を読むいま、タイム・イン・ア・ボトルになってしまった。2019/09/12
nobi
36
下町的人情味を湛えつつ松本人志的ツッコミを連発する。にんまりしたり噴き出したりしながら納得してしまう異文化比較を主軸とした上質の文化論、という感じの連載。凝り固まった思考からは、こんな切れ味良い柔軟な発想は生まれないだろうし、でvividな文化論にまで展開できるのも、英米文学はもちろん別役実、南伸坊、高橋源一郎といったアウトロー的な人達の本、ポップ・カルチャー的な音楽、映画まで総動員できる「生半可な學者」さんだから?それに毎回〆切に追われていたとは思えないほど、悠々と脱線して切羽詰まった感がない。お洒落。2016/03/21
Mishima
20
辞書についての件がとりわけ興味深い。彼のような翻訳者ともなれば、いったいどれだけの辞書と接してきたのか。英語を教授している側面からの視点もあり、蘊蓄に満ちた内容だった。にもかかわらず、その文面から立ち上がる気配は気負いがなくニュートラルなバランスが読んでいて小気味いい。彼の訳したアメリカ文学にもっと目をむけてみようと思った。2015/04/16
ぱせり
17
「・・・と考えるのは私だけだろうか」「・・・であることを教えられたような気がする」「・・・なのだと考えさせられた」という言葉が文章の結び方頻度ベスト3だと教えられた気がする。自分の文章も、これらの言葉をなんと多用していることか、とつくづく考えさせられた。これからはこの三つの言葉は使わない、と考えるのは私だけだろうか。(柴田元幸さんのエッセイは初めてだけど、こんなにおもしろいとは。しかも30代の文章、若々しいです)2010/07/22