白水Uブックス
バーナム博物館

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  • サイズ B40判/ページ数 347p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784560071403
  • NDC分類 933
  • Cコード C0297

内容説明

幻想の航海、盤上ゲーム、魔術、博物館…。最後のロマン主義者ミルハウザーが織りなす幻影と現実のモザイク模様。ときには『不思議な国のアリス』や『千夜一夜物語』を下敷きに、ときにはポーに敬意を表しつつ、想像力のおもむくままに紡ぎだされた十の物語。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

藤月はな(灯れ松明の火)

93
ミルハウザー作品を読んで感じる違和感の理由がやっと、分かった。私は、この作者の長編にはスッと物語に入っていける。ところが、短編ではメタ的で、日常の些細で類稀なる幸福を描いた部分以外のはどうしても合わないのだ。三つのパートが絡み合う「シンドバット第八の航海」の第二パートの最後が一番、心に響いた。なぜなら、「二つの世界が完璧に調和したこの瞬間が、永遠に続けばいいのに」という思いは本の世界に耽溺する事を通じて世界が愛おしく、感じるあの一瞬があるから。「探偵ゲーム」の人の心の中で物語が止まるという描写も深みがある2017/12/11

penguin-blue

39
老境を迎えたシンドバッド、アリスが落ちていく途中に見たもの、想像から生まれた恋人、映画館に迷い込んで束の間見た幻、伝説の奇術師…小説ならでは、そして短篇ならでは味わえる世界。長編や、まして映像ならどうしても説明せずにはいられなかったり、見えてしまうものをうまく隠すのに苦労するが短編ならそこを上手にすり抜け読み手に後をゆだねることができる。お気に入りは家族の行事に急に彼女を連れて帰ってきた兄への複雑な思いに揺れる家族模様と、盤上のゲームの登場人物達が並行して描かれる「探偵ゲーム」。2019/01/31

あーびん

37
「バーナム博物館」映画グレイテスト・ショーマンのモデルのP・T・バーナムのうさんくさいイメージをそのまま架空の博物館にしたような話。この町の住人はおそらく死ぬまでに最低一度はこの博物館を訪れるだろう。悪趣味で低俗でいんちきと揶揄する人々がいる一方で、子供たちは蠱惑的な館内の展示(空飛ぶ絨毯、人魚、グリフィン、一角獣など)に胸を躍らせる。幻想的で卑俗的ですごく魅力的な博物館。「幻影師、アイゼンハイム」19世紀末ウィーンに現れた魔術師の華麗なる幻影をめぐる顛末。エドワード・ノートン主演の映画も観てみたい。2020/11/25

田氏

32
文章は暴力的なまでに精緻に写生されたものたちであふれかえり、頭の中の部屋を埋め尽くし、その精緻さゆえに読み手の現実感を浸食する。しかし描かれている事物それ自体は、夢と同じもので形作られた虚構である。虚構である物語が物語として存在するためには、虚構を虚構としてみつめる視線を必要とする。その視線の数だけ物語が存在するとなれば、あまたの物語が見つめ返す視線の先には、どれだけの何があるのだろうか。10の短編に収められた幻想を、物語のメタファーという実像として掴もうとしても、物質ならざる幻影のごとく指をすり抜ける。2020/07/27

さっちゃん

23
この人はどこまで精緻な迷路を組み立ててゆくのだろう。あまりに突飛で進むべき道を辿れなくなり、迷路の中で途方にくれる時にも楽しんでいることに気づくのだけど。個人的にはなんでもない日常がふいに歪んでいくような「雨」が一番好き。2016/04/23

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