出版社内容情報
早朝の大気を切り裂いて、若い女の乗ったオートバイが疾走する。夫を棄てて愛人の許へ愛車を駆り立てて行くレベッカ。愛の幻想に錯乱しながら、彼女は破滅に向かって驀進する。現代人の日常の奥に潜む狂気のエネルギーを詩的幻想に包んで作品化した、マンディアルグの大衆小説第1作。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
100
エロティックで挑発的なマンディアルグの傑作長編。我が国の三島由紀夫に似たところがある。オートバイで疾走するヒロインの姿がまぶしい。高踏的な作家であるマンディアルグとオートバイは結び付かない気がしたが、その予想は良い意味で裏切られた。オートバイでフランスの国境を超えるだけではなく、意識の世界も超えて向こう側へ突き抜けてしまうのだ。オートバイの無機的なイメージが、植物の有機的なイメージと融合するあたりは、シュールリアリストとしてのこの作家の面目躍如だった。2018/03/23
佳音
98
おもしろかった!読者も共に疾走していたかのような哀しくも爽快な読後感。人妻が、恋人に会いにオートバイを疾走させ、会いにいく。私が愛人としないのは、結婚前からの恋人だから。あちらのものだから、キリスト教を示唆する、隠喩、暗喩がある。オートバイに乗って貞淑と背徳 欲望と抑制を颯爽と往き来する女。宗教的暗示と相まってがこの小説の魅力を際立たせる。2017/03/04
藤月はな(灯れ松明の火)
83
映画『あの胸にもう一度』が好みドンピシャ、且つ面白かったのでコメントに感想を書いた所、読友さん達に原作の存在を教えられました。ありがとうございました。読んでみると映画は実験的カメラワークやハイセンスな衣装を使いながら忠実に再現していたという事が珍しい。とは言え、映画ではアラン・ドロン氏が演じたダニエルが原作では頭頂部が禿げかけだったとは^^;年若い女の自意識過剰さ、世慣れしてなさ、過去と現在、そして未来への期待に揺れ動きながらも止められない女心がむず痒いです。後、全身で感じるハーレーのエロティックさに赤面2017/09/02
コットン
61
映画『あの胸にもういちど』の原作でsm的感覚を文学に消化。 2019/04/13
えりか
59
借り本。「スピード」「官能」「愛」この3語で語れるほどシンプル。ひたすら怪物のようなハーレーで走る。倍は年上の愛する人の元へ。ライダースーツに身を包む、中はパンティーのみで。甦る記憶、後方へ流れていく景色、全身に伝わり陶酔さえおぼえるハーレーの振動とスピード、全てが官能へと導く。急き立てる。神、と同時に悪魔のような男に支配され服従する悦びを知ってしまった19歳の女は、ただ走る。愛というものに溺れてしまった女を待っているものは「ディオニソス的な」破滅かもしれない。けれどそれでもいい、ただ逢いたいのだから。2017/02/25