出版社内容情報
【全巻内容】1 ヘンリー六世第一部/2 ヘンリー六世第二部/3 ヘンリー六世第三部/4 リチャード三世/5 間違いの喜劇/6 タイタス・アンドロニカス/7 じゃじゃ馬ならし/8 ヴェローナの二紳士/9 恋の骨折り損/10 ロミオとジュリエット/11 リチャード二世/12 夏の夜の夢/13 ジョン王/14 ヴェニスの商人/15 ヘンリー四世第一部/16 ヘンリー四世第二部/17 から騒ぎ/18 ウィンザーの陽気な女房たち/19 ヘンリー五世/20 ジュリアス・シーザー/21 お気に召すまま/22 十二夜/23 ハムレット/24 トロイラスとクレシダ/25 終わりよければすべてよし/26 尺には尺を/27 オセロー/28 リア王/29 マクベス/30 アントニーとクレオパトラ/31 コリオレーナス/32 アテネのタイモン/33 ペリクリーズ/34 シンベリン/35 冬物語/36 テンペスト/37 ヘンリー八世
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
121
今更ながらシャイロックの存在感が圧倒的である。金を貸したら利子を付けるのは今日では常識以前の話。しかしアントニオは「友情」のために無利子でバッサーニオに貸す。それが「美談」とされる。このため苦境に陥り漸く最後に巧妙な理屈を付けてシャイロックをやっつけてホッとするわけだが、今日の経済理論ではシャイロックこそ王道の金融理論、虐げられて生き残るために磨いた「経済理論」だ。もしこの物語に「続編」があるとすれば、不死鳥のごとく生き返ってますますみんなの迷惑的存在になっているのではと思ったりした。2023/11/01
ロビン
18
アントーニオやポーシャらの話す、聖書やギリシャ神話に言及する教養豊かで格調高い言葉から、ラーンスロットらの話すくだけた下町言葉、シャイロックの気の利いた悪態の言葉まで、あらゆる人間の言語表現を掌にしたようなシェイクスピア。ユダヤ人に対する偏見はいただけないのだが、箱選び、男装、裁判と面白い名場面が続く。劇作家としてのみならず、ロレンゾーとジェシカの駆け落ちのくだりで、ロレンゾーが天の音楽について語る場面や、豊饒で巧みな比喩に満ちた台詞の数々にはこの天才の詩人としての顔までもが覗いており、感嘆するほかない。2023/07/25
たかしくん。
18
今更ながら初読。有名な「人肉の証文」と、これは知りませんでしたが「箱選び」が主要なプロットですね。勧善懲悪の喜劇ですが、どうしても、当時のユダヤ人に対する敵意が背景にあるのでしょうか。作者の知らぬ数百年後のことを思うと、「シャイロックの悲劇」の要素も感じられます。 それにしても、小田島氏の訳は分かりやすい!2014/05/17
柏もち
10
小学生の時、学校から演劇鑑賞会で観に行って爆睡し、最初と裁判あたりからしか覚えてなかった作品。全体はこんな話だったのか。そういえば当時はユダヤ人の商人が頓知で言い負かされる姿にモヤモヤしたものだった。いっそ相手を殺して自分も死刑になるか、「私が切り取るとは明記していませんので、切り取り役は裁判官に任せます」とか言えよ!と思ったんだよな。懐かしい。なんだか今まで読んできた作品の中では世俗的というか、必ずしも必要でない登場人物が多いところに、舞台より現代ドラマ的リアリティがあるな、と思った。2016/04/12
牛歩
10
若いころ岩波文庫版を読んだときは「シャイロックの悲劇だ」と思ったが、今回は喜劇の印象。/シャイロック退場のあと、さらにもう一幕あることを考えるべきなのかもしれない。シャイロックは劇中最高の山場を支える役であるけれど、それは幾つもある笑い所の一つでもあるのだ。/3組のカップルに対して最後まで独り身のアントーニオは、孤独なシャイロックと表裏一体なのかもしれない。2013/07/23