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フランドルへの道 (新装復刊)

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  • サイズ B6判/ページ数 303p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784560047897
  • NDC分類 953
  • Cコード C0097

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

syaori

43
この小説において時は丸い形をしているように思われます。その中をたゆとうジョルジュには雨の中の壊走、収容所、「彼女」との逢瀬と、遠い過去も近い過去も隔てなく浮かび上がり、彼の想像力と交じり合い、時系列も朧気で、事実と想像の別もつきにくい有様。ただ、死んだ仲間や道端で大地へと返りゆく馬へ何度も立ち返る彼の想起を追いながら自分が感じたのは、不思議なことに生きること。それは、とりとめもないその思考、それこそが死んだ馬や仲間と彼とを隔てているもので、かつても、恐らく現在も彼を生かしているものだからなのだと思います。2018/04/13

ドン•マルロー

26
記憶が記憶を呼び、ある景色が全く別の景色へと移り変わり、それと同様にある人の表情が声が言葉が、現れては消え現れては消えを繰り返す。それはさながら次から次へと関心の対象を変える子どもか、花弁から花弁へとたゆたう蝶のようである。しかし記憶を呼び起こす際の我々の意識の働きとは概ねこんなふうではなかろうか。そのようにして記憶を呼び起こす者を取り巻く時間(それは本来一瞬間のはずだが)は巨大な絵巻物ごとき長さと荘重さとを帯びる。その記憶喚起術はプルーストほどの広がりを持たないが、より連鎖的でありまた重畳的でもある。2016/12/17

柳瀬敬二

10
プルーストとかその辺りの系譜。つまりは時系列を無視し、感覚器官が捉えたものを徹底的に描写し続けることで記憶そのものを本の中に再現しようとしている……のだがこの小説は特に読みにくい。文体が独特な上に句読点が極端に少なく、さらには時系列が切り替わる合図すらまともにない。通常の小説の何倍もの情報量が襲いかかってくるので、読む側としてはその流れに身を任せるしかない。この本とスワン家のほうへのどちらかを再読しろと言われたら間違いなく後者を選ぶくらいの密度。2014/06/02

algon

9
ハードな読み応えには耐性がついてきたと思っていたが…これ程の散文の迷路が存在するとは思ってもいなかった。日本では「abさんご」あたりが代表格かと思うがこの本はレベルが違った。文の主格、時制、脈絡、環境に至るまで読み終えても確たる判断はつかない(笑)。これで300pも書けるというエモーションに敬意を感じてしまった。あらすじは4人の兵士の敗走?の間のやり取りとか上官の妻への情熱とか繰り返し出てくる死んだ馬とかというみょうちきりんな構成だがこんなに変だとツッコミする気も起きないというノーベル文学賞作家の代表作。2022/07/06

ディヴァイン

7
本を手にしていた感覚が次第に溶けてゆき、この洪水の中をずぶ濡れになりながら走る自分がいた。小説の中に入れたのではなく、深い軽蔑の意をもって拒絶されたのに、恩恵を受けたいがためにノコノコ侵入してこんな目に合わされる。そんなこと。この中の些細な時間を生きたいと願った果てに待ち受ける道は途方もない。2009/08/27

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