アウステルリッツ

アウステルリッツ

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  • サイズ B6判/ページ数 289p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784560047675
  • NDC分類 943
  • Cコード C0097

内容説明

ガラスの檻に囲われ、薄暗い灯りのしたで倦むことなく一切れの林檎を洗いつづける洗い熊…。冒頭まもなく描かれる神経症的なその動物のように、憑かれたようにみずからの過去を探しつづける男がいる。全米批評家協会賞受賞作品。

著者等紹介

ゼーバルト,ヴィンフリート・ゲオルク[ゼーバルト,ヴィンフリートゲオルク][Sebald,Winfried Georg]
1944年、ドイツ生まれ。ドイツ文学を修め、69年からイギリスに定住し、イースト・アングリア大学で文学の教鞭をとる。散文作品Schwindel,Gef¨uhle(『眩暈、感情』、90年)、Die Ausgewanderten(『移民たち』、92年)、Die Ringe des Saturn(『土星の環』、95年)を発表し、ハイネ賞、ブレーメン文学賞など多くの文学賞に輝く。遺作となったAUSTERLITZ(『アウステルリッツ』、01年)も、全米批評家協会賞をはじめ多数受賞した。2001年、住まいのあるイギリス、ノリッジで自動車事故に遭い、逝去

鈴木仁子[スズキヒトコ]
1956年生まれ。名古屋大学大学院博士課程前期中退
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

遥かなる想い

209
アウステルリッツとともに ヨーロッパを巡る旅…西洋史に 疎い私にはよくわからなかったが、 背景にある歴史の重みが 独特の雰囲気を醸し出す。 著者が「アウステルリッツ」という 題名に込めた意図は何だったのか…延々と続く語りは 改行もなく、正直読みにくく 入り込めなかったが… 文中で頻りに繰り返される「アウステルリッツは語った」 という表現と、写真のみが印象に残る本だった。2015/12/20

どんぐり

106
戦争勃発の直後に<子供の移送>によってプラハを離れイギリスに移送され助かったユダヤ人アウステルリッツ。これは5歳に満たないうちに名前と言語と故郷を喪失した彼の過去を探す記憶の旅を記した回想録でもある。主人公のアウステルリッツは仮構の人物であるが、どこかに存在したかもしれないあの歴史の一人として、現実を切り取ったような写真とともに描いている。駅舎や監獄建築、寺院建築、動物園、建物や風景を目にした瞬間によみがえるアウステルリッツの過去の記憶と省察。ゼーバルトの作品を読むのは、『移民たち』に次いでこれで2冊目。2015/06/16

扉のこちら側

92
初読。2015年1195冊め。【91/G1000】イギリス人青年がある日本当はアウステルリッツという名のユダヤ人であること、両親はナチによるショア(ホロコースト)で殺害されたことを知らされる。自身の過去を探す旅を、友人である語り手が「アウステルリッツはこう語った」と表記する体裁なのに、語りの主体がアウステルリッツになっていたりと、なんとも微妙な距離感を感じさせる文体。「~だと~は語った」は、ドイツ語らしい、ベルンハルト風の書き方だけれど、それを日本語で読むとまた不思議な趣。【第7回G1000チャレンジ】2015/12/08

(C17H26O4)

84
ほぼ改行もなくページを埋め尽くす文章と、幾枚ものモノクロの写真。硬く陰鬱なグレイの濃淡のみで書かれているような印象を受け、手にした当初、作品が読み手と距離を取っているように感じた。読むまでに年数を要した。が、今回ひとたび読み始めてみると、ゼーバルトの独特の文章にすっかり魅入られてしまった。もともと語りの手法のとられた文章は好きなのだ。聞き手となって浸り切った。「ーーとアウステルリッツは語った」の頻出する抑揚を抑えた伝聞による語り。語り。語り。語り。その奥から立ち上がってくる記憶の深淵。歴史の闇。2022/09/14

zirou1984

73
震えるほどの素晴らしさ、否、震えるしかないほどの素晴らしさだった。歴史という忘却の渦に飲み込まれたひとつの人生、存在したかもしれない悲劇の人生をゼーバルトは繊細な文体とモノクロの写真によって丁寧に創造する。近過ぎも遠過ぎもない距離から確実に届けられる、ひとつの過去、記憶、そして歴史。それはとても孤独に思えるかもしれないが、不思議と心を穏やかにしてくれる。沈黙から生まれた声を静かに受け止めよう、それはか細き生、歴史から見放された生を丁寧に支えてくれる。色褪せない美しさが深い夜を包み込んでくれる、そんな傑作。2014/05/06

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