• ポイントキャンペーン

ハドリアヌス帝の回想

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 379p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784560047118
  • NDC分類 958
  • Cコード C0397

出版社内容情報

旅とギリシア、芸術と美少年を愛したローマ五賢帝のひとりハドリアヌス。その稀有の生涯を作者が内側から生きて語る「ひとつの夢による肖像」。著者円熟期の最高傑作。

内容説明

病を自覚し、みずからの治世と命の終焉が遠からぬことをわきまえたひとりの偉大な政治家が正式な皇位継承者への書簡の形を借りた独白に内側からついていけばそれでよく、一度あわせた周波は最後までとぎれることなく読者を導いてゆく。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

syota

21
古い神々が力を失い、新しい神(キリスト教)はまだ力を得ていない史上稀な”神の空白期”に、神に等しい力を得たローマ皇帝ハドリアヌス。本書は帝の独白という形をとり、彼が何を想い何を悩み、どのような価値観のもとに行動したかを詳細に綴っている。歴史上の人物の口を借りて現代人である作者が語るのではなく、古代人が直接語りかけているような錯覚を覚えてしまう。作者はギリシア・ローマの膨大な古典を繰り返し愛読し、その広範で深い知識をもとに帝の考え方や価値観を説得力豊かに再現している。(続く)2019/09/07

兎乃

16
再読。個人的にローマ史と聖書を立体的に絡めて指導してくれた登美子先生に感謝。P339からの訳注はほぼ必要ない。けれど、本書はギボン「ローマ帝国衰亡史」を読まねばわかるまい、といった類のものではない。帯にあるように《完璧な声の肖像》であり、ヘレニストである賢帝ハドリアヌスの内側から声、すなわち一人称の想像的自伝であり、ユルスナールが長い歳月をかけて書き上げた「小説」なのだ。あらためて、最後の「作者による覚え書き」に感動した。書く事の情熱と慎み深さと真摯な姿勢を目の当たりにする。読者として至福の時間でした。2012/10/21

ふるい

7
ハドリアヌスのことはもちろん古代ローマ時代のことにもぜんぜん馴染みがなく、なかなか入り込みづらい読書であった。しかし、著者の見事な筆致によって、読んでいる私自身もハドリアヌスという一人の人間の生きた時間を追体験できたようで、最後には静かな感動があった。ただ、よくわからないところも多かったので、年を取ってからまた読んでみたいと思う。2017/09/07

solaris

6
紀元二世紀頃ローマ・ハドリアヌス帝による後継者に向けた、我が人生の回想を伝えようとする遺言書。ハドリアヌスはテルマエで市村さんが演じてました。この本も強烈すぎ。改行・空行がほとんどなくびっしり。使われている言葉と語りの色合いが美しすぎる。史実を歪めず、「死の横顔を見定める」境地に達した賢人の人間存在の評価を作家自らの内面から吐き出させる方法には執念を感じずにはいられない。西はヒスパニア、東はメソポタミアと勢力は最大化し、ローマ帝国は安定した時代。神格化・形式化を廃して独白形式で描こうとした。2016/03/19

江口紀

6
作家はここまで他者の内面に入り込むことができるのか!五賢帝の一人ハドリアヌス帝。ローマ以外で育ち、辺境征伐の軍人となった彼の眼を通じてみるローマの歴史。それを背景に皇帝の地位を目指す野心とその手段、そして周囲の眼まで冷静に語りつくす。一方で最愛の美少年にメロメロに溺れる自分の姿が愚かだとは最後まで認めようとしない。そんな彼が皇帝として死を前にしてたどり着いた「アノ」境地が語られる最終章「忍耐」を読む頃には読者は本当に彼がこの本を書いたと信じてしまうから、うっかりもらい泣きするかも。2010/03/21

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/483610
  • ご注意事項