内容説明
安定的な原材料供給や信用リスク軽減に金融工学が果たす役割は大きい。リーマンショックを引き起こした住宅ローン担保証券に、金融技術はほとんど使われていなかったのだ。バブルとその崩壊を引き起こす「強欲」の「暴走」という実態を描きながら、改めて金融工学の本質を説く。
目次
第1章 “金融工学バッシング”のなかで
第2章 エンジニア倫理と強欲の論理
第3章 「金融工学悪玉論」への反論
第4章 金融工学の出発点
第5章 貸したおカネは戻ってくるのか?
第6章 リスク管理の限界
著者等紹介
今野浩[コンノヒロシ]
1940年生まれ。1963年東京大学工学部卒。1971年スタンフォード大学OR学科博士課程修了。東京工業大学教授を経て、2001年より中央大学理工学部教授。Ph.D.、工学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Kiyoshi Utsugi
35
今野浩の「金融工学は何をしてきたのか」を読了しました。 日本の金融工学のパイオニアの一人である今野浩が、何度目かの金融工学バッシングを受けた2008年頃に反論をしようとして書かれたのが、2009年出版のこの本です。 2008年の時点でパイオニアとされていたのは、他には伊藤清、刈屋武昭、楠岡成雄だそうです。 金融工学は間違ったことをしてきたのかをあきらかにするために、金融工学者がどのような仕事をしてきたのかを紹介しています。2021/05/23
ゆうゆう
8
金融工学とは「将来の不確実なキャッシュフローの計量と制御」。金融、経済は、理系と文系の交差点で、バランス間違えると大変なことになる。だから、大変なことになったのね。賢者の智恵も使い方間違えると大変なのはわかっているのに、AIもそうだと思うけど、結局は、使う人の良識にかかってしまう。長いスパンでは右肩あがりでも、もうちょっと短いスパンでは、どうなるのかなぁ。そう、ちなみに私の年金は…?2019/02/24
小鈴
5
これはオススメです。金融工学とは「将来の不確実なキャッシュフローの計量と制御」である。工学部出身の著者は、日本での金融工学の礎を築いたが、(欧米の)強欲な人達から資産を防衛する術としての倫理と理性を踏まえた金融工学を提唱している。竹槍を構えて戦うわけにはいかないのだ。金融工学は、使い方によっては原子力(リスク回避)にもなれば、原爆(市場崩壊)にもなるのだ。この例えが工学出身を表してるよね。2009/10/29
takao
2
ふむ2022/02/08
ango28
2
知的好奇心がチクチクと刺激された。確かにタイに金融工学のスペシャリストが政府内にいればジョージ・ソロスに狙われる事もなかったろう。防衛的金融工学は必要だ。一方、攻撃的金融工学の手掛かりをこの書に求めてはいけない。金融工学はリスクの計測の為にあり、不確実性を測るものではないので現在の様な強欲が蔓延る中では前提となるリスクが成り立たないので無力だ。これらの解決はもはや工学ではなく国際間レベルの政治の話になるが、今のところ強欲規制の動きはなく、それが無い内は株市場の規模縮小は留まらないだろうと予測する。2010/08/28