なぜ、「あれ」が思い出せなくなるのか―記憶と脳の７つの謎

シャクター，ダニエル・Ｌ．【著】〈Ｓｃｈａｃｔｅｒ，Ｄａｎｉｅｌ Ｌ．〉/春日井 晶子【訳】

日経ＢＰＭ（日本経済新聞出版本部）（2002/04発売）

• サイズ B6判／ページ数 285p／高さ 20cm
• 商品コード 9784532164157
• NDC分類 141.34
• Cコード C0036

出版社内容情報

人の名前が思い出せなかったり、大切な約束を忘れたり、ごく最近の出来事を覚えていないのはなぜか？　日常的な物忘れや度忘れからアルツハイマー病まで、記憶にまつわる七つの不思議な現象を最新研究をもとに解説。

内容説明

日々の暮らしのなかでの物忘れや度忘れからアルツハイマー病、デジャ＝ヴュ、さらには「固有名詞失語症」まで―。記憶研究の第一人者が、心理学、脳神経科学、生物学などの最新実験データを駆使して、記憶と脳にまつわる七つの不思議をやさしく解き明かす。

目次

序章　記憶は「神さまのお恵み」か
第１章　なぜ、ずっと覚えていられないのか（物忘れ）
第２章　忘れっぽい人の研究（不注意）
第３章　あの人の名前が思い出せない（妨害）
第４章　デジャ＝ヴュから無意識の盗作まで（混乱）
第５章　偽の記憶の誕生（暗示されやすさ）
第６章　都合がいい記憶、都合が悪い記憶（書き換え）
第７章　嫌な出来事が忘れられない（つきまとう記憶）
第８章　七つのエラーの正体を探る

著者等紹介

シャクター，ダニエル・Ｌ．［シャクター，ダニエルＬ．］［Ｓｃｈａｃｔｅｒ，Ｄａｎｉｅｌ　Ｌ．］
ハーバード大学の心理学部教授。記憶に関する研究の第一人者として知られる。１９７４年ノースカロライナ大学卒。トロント大学で修士号・博士号取得。オクスフォード大学臨床心理学部の客員研究員、アリゾナ大学心理学部教授をへて１９９１年にハーバード大学教授となり、現在は心理学部長を兼ねる。１９９６年に発表した前作Ｓｅａｒｃｈｉｎｇ　ｆｏｒ　Ｍｅｍｏｒｙは全米心理学会賞を受賞したほか、ニューヨークタイムズ紙の「ノータブル・ブック・オブ・ザ・イヤー（その年で最も重要な本）」に選ばれた。ＮＢＣやＰＢＳなど全米メディアにも頻繁に登場している。マサチューセッツ州ニュートン在住

春日井晶子［カスガイアキコ］
１９６８年東京生まれ。東京外国語大学ポルトガル・ブラジル語科卒。経済協力開発機構（ＯＥＣＤ）日本政府代表部（在パリ）、大使館勤務などをへて翻訳家となる
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[優希]

人の記憶は実は相当曖昧であるということがわかります。自分ではきちんと覚えているつもりでも、それなりのフィルターがかかり、自分なりの記憶になってしまう。また、固有名詞等を忘れてしまうのは情報が意味を持たないからであるということも示唆しています。記憶が完全でないということを提示し、その意味を明らかにしていることで、記憶と脳の関係を知ることができました。

2017/05/05

[Humbaba]

人の記憶は完全なものではない．しかし，完全でないのには理由がある．確かに記憶が完全でないことによるマイナスがあるのは確かである．しかし，それ以上に完全でないことに救われている状況というのは多く在る．

2013/01/05

[ともふく]

最近、明らかに人の名前が思い出せなくなってきたので読んでみた。その原因は脳の衰えであり、どうしようもないようだが、脳の仕組みの帰結でもあり、過度に思い悩むこともなさそう。インターネットやスマホの普及で記憶力を鍛える機会が減少していると思うので意識して鍛えることにしよう。

2017/09/02

[makio37]

物忘れなどの記憶のエラーとは、柔軟で効率的な記憶システムの副産物であると理解した。この結論は予想の範囲内だったが、個々の内容で光るものはあった。まず、人名の忘れやすさについて。様々な概念的表象が語彙的表象と直接つながる普通名詞と異なり、概念的表象が一度「人物識別ノード」に集まった後で一本の線で語彙的表象につながる為との仮説に納得した。また、左脳がオーウェル『1984』の真理省(歴史を都合よく改ざんする省)のように機能し得るという喩えは、記憶の不確かさを端的に示していると思う。

2015/07/04

[M_Study]

人の記憶というものはすこぶる曖昧だ、ということがよくわかる。体験してもいないことを思い出せるし、記憶には簡単にバイアスがかかる。人名など固有名詞を忘れやすいのは、それ単体では意味がなく具体的情報と結びつきにくいから。（パン屋とか）具体的なイメージを持ちやすい情報と結びついていると忘れにくくなるそうで、なるほどと思った。

2015/03/02