たのしくできる並列処理コンピュータ

たのしくできる並列処理コンピュータ

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  • サイズ A5判/ページ数 197p/高さ 21cm
  • 商品コード 9784501533809
  • NDC分類 548.2
  • Cコード C3055

出版社内容情報

並列処理はデータやプログラムを小分けにして複数のプロセッサで処理することで計算時間を短縮しようとするものです。並列処理の考え方はコンピュータの発明と同時に考えられてきましたが,1台作るのにも大変な時代に多数のプロセッサをつなぐことはなかなかできませんでした。しかし集積回路技術の発達により今日では多数のプロセッサを接続することは困難ではなくなっています。
 1980年代後半からは並列計算機の製品化が活発になり,現在ではスーパーコンピュータや大規模サーバなどはすべて並列型になっています。ワークステーションやパソコンも,高性能のものは2~4個のプロセッサをもっています。また最近は,複数のコンピュータをネットワーク接続して並列/分散処理をさせる「コンピュータクラスタ」も利用されています。さらには,地球規模でネットワーク接続されたコンピュータで分散処理を行う「グローバルコンピューティング」も研究されています。
 このように並列処理は最近の高性能コンピュータにはなくてはならないものですが,一般的に自分でプログラミングして利用するところまでは至っていません。本書は,実験によって並列処理をより具体的に理解できることに重点を置き,代表的な並列計算機方式に対するハードウェアの作製とプログラミング実例,実行結果を中心に構成しています。
 並列処理の実験のためには並列計算機が必要です。普通のコンピュータでマルチタスクにより仮想的に並列処理をすることは可能ですが,台数の増加による計算時間の短縮や,複数プロセッサが同時に動いているときに起きる問題などは実際にプロセッサが複数ないと実験できません。マルチプロセッサ型のパソコンや,パソコンによるクラスタも,個人で用意するには困難です。
 このため本書では実験用に,数万円の部品代で作れるパーソナルコンピュータ用のマルチプロセッサボードを製作することにしました。その上でさまざまな並列処理プログラムを動かし,実験を行います。プロセッサ数を増やすことで計算時間が短縮できる場合や,プロセッサを多くしても速くならない場合,並列処理特有のプログラミングテクニックなどをこのボードでの実験結果を示しながら説明します。
 1章で現在の並列処理技術の全般(ハードウェア,ソフトウェア)について解説し,2章以降は実験用マルチプロセッサの製作と,これを使った各種並列プログラムの作成と実行結果を説明していきます。プログラミングは,共有メモリ型および分散メモリ型の両方を取り上げます。できれば実験ボードを使って自分でプログラミングしてもらえるといいのですが,それができなくても,詳細なハードウェア構成,プログラムリスト,実行時間の測定値などにより並列処理がより具体的に理解できるようになるものと期待します。本書により,並列処理が本の中の世界から読者の具体的対象として抜け出し,並列計算機を使ってみようという気になってもらえると幸いです。
 最後に,本書の出版でお世話になった東京電機大学出版局の植村八潮氏に感謝します。また,本書の実験は岡山理科大学工学部情報工学科において行われました。実験に協力してくれた学生諸氏に感謝します。

小畑正貴

はじめに
1 並列処理コンピュータの概要
 1. 1 並列処理の必要性
 1. 2 並列処理の方式
  1.2.1 命令パイプライン
  1.2.2 演算パイプライン(ベクトルプロセッサ)
  1.2.3 スーパースカラ
  1.2.4 VLIW
  1.2.5 SIMD型並列計算機(プロセッサアレイ)
  1.2.6 マルチプロセッサ(MIMD型並列計算機)
 1. 3 マルチプロセッサのハードウェア
  1.3.1 共有メモリと分散メモリ
  1.3.2 ハードウェア構成
  1.3.3 結合ネットワーク
  1.3.4 メモリシステム
  1.3.5 排他制御
  1.3.6 同期機構
  1.3.7 プロセッサ
 1. 4 並列処理のソフトウェア
  1.4.1 並列計算機のソフトウェア開発
  1.4.2 並列プログラミング言語
  1.4.3 自動並列化
  1.4.4 負荷分散とスケジューリング
2 実験用マルチプロセッサボードmpSH
3 mpSHボードのハードウェア
 3. 1 ハードウェアの全体構成
 3. 2 単位プロセッサ
 3. 3 共有メモリ
 3. 4 PCIバスインターフェース
4 ソフトウェアの全体構成とPC側ユーティリティ
 4. 1 Cコンパイラ
 4. 2 メモリマップとレジスタマップ
 4. 3 ユーティリティ・プログラム
5 並列ライブラリプログラム
 5. 1 排他制御
 5. 2 バリア同期
 5. 3 生産者─消費者同期
 5. 4 時間計測
 5. 5 入出力
 5. 6 その他の関数
 5. 7 スタートアップルーチン
 5. 8 共有変数の指定
6 インストールと並列プログラムの実行方法
 6. 1 インストール
 6. 2 実行方法
 6. 3 ロードと実行台数の設定
 6. 4 時間計測
 6. 5 変 数
7 並列プログラムの基礎
 7. 1 排他制御
 7. 2 デッドロック
 7. 3 データ並列プログラミング
 7. 4 静的負荷分散と動的負荷分散
 7. 5 多重ループの並列化
 7. 6 生産者─消費者同期
 7. 7 doallとdoacross
 7. 8 パイプライン処理
 7. 9 キュー(待ち行列)
 7. 10 集中制御と分散制御
8 応用問題
 8. 1 行列積
 8. 2 数値積分(台形公式)
 8. 3 連立方程式(掃き出し法)
 8. 4 連立方程式(ガウス・ザイデル法)
 8. 5 8クイーン問題
9 分散メモリプログラミング(MPI)
 9. 1 MPIライブラリの作成
 9. 2 プログラミングと実行
 9. 3 1対1の通信
 9. 4 rank順の実行
 9. 5 総 和
 9. 6 シフト
 9. 7 配 列
 9. 8 行列積
 9. 9 台形公式
 9. 10 おわりに
付  録
 PC側プログラム
 mpSH側プログラム
参考文献
索  引

内容説明

1章で現在の並列処理技術の全般(ハードウェア、ソフトウェア)について解説し、2章以降は実験用マルチプロセッサの製作と、これを使った各種並列プログラムの作成と実行結果を説明。プログラミングは、共有メモリ型および分散メモリ型の両方を取り上げる。

目次

1 並列処理コンピュータの概要
2 実験用マルチプロセッサボードmpSH
3 mpSHボードのハードウェア
4 ソフトウェアの全体構成とPC側ユーティリティ
5 並列ライブラリプログラム
6 インストールと並列プログラムの実行方法
7 並列プログラムの基礎
8 応用問題
9 分散メモリプログラミング(MPI)

著者等紹介

小畑正貴[コハタマサキ]
神戸大学工学部卒業(1980)。神戸大学大学院博士課程修了(1985)。学術博士(1985)。岡山理科大学工学部教授(1996)。倉敷芸術科学大学大学院産業科学技術研究科教授(2001)
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感想・レビュー

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Matsui Kazuhiro

0
流し読み.実際に本の中では「mpSHボード」が手元にある想定で話が進んでいて,実際のプログラムのコードも掲載されていて思っていたより技術寄りだった.前半はコンピューターアーキテクチャでよく見る内容だったが後半はしっかり分散処理や並列処理に光があたっていて学びが多かった. #802014/10/21

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