内容説明
宿敵ヤン・ウェンリーと雌雄を決するべく、帝国軍の総力をイゼルローン回廊に結集させた皇帝ラインハルト。ついに“常勝”と“不敗”、最後の決戦の火蓋が切って落とされた。激戦に次ぐ激戦の中、帝国軍、不正規隊双方の名将が相次いで斃れる。ようやく停戦の契機が訪れたその時、予想し得ぬ「事件」が勃発し、両陣営に激しい衝撃を与えた。銀河英雄叙事詩の雄編、怒涛の急展開。
著者等紹介
田中芳樹[タナカヨシキ]
1952年、熊本県生まれ。学習院大学大学院修了。78年「緑の草原に…」で幻影城新人賞受賞。88年『銀河英雄伝説』で第19回星雲賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おかむー
98
一応ネタバレは伏せておくが、本伝10巻のうち2巻と同等の衝撃をうけるターニングポイント。『たいへんよくできました』。民主主義最後の牙城となったイゼルローン要塞に拠るヤン一党に対し、皇帝ラインハルト率いる帝国軍が圧倒的な兵力をもって決戦を挑む。序盤からの戦記ものとしての盛り上がりから一転、中盤にもたらされる事件によってシリーズの大きな方向性にひとつの決着がつく。改めて考えてみれば、ここから残り二巻を単なる事後処理にせずに描き切ってみせるところがこのシリーズの見事さなのだなぁ。2017/08/27
かえで
81
シリーズ8巻目。....還らず。ついに来てしまった。今までの巻とは衝撃の大きさは段違い。実はこの巻で非常に大きな出来事が起こることは知っていましたが、それでも衝撃です...。小説の登場人物にここまで感情移入したのは初めてかもしれない。ここまで大きな出来事を経ながら、物語は停滞することがない。それどころか、むしろ終末に向け加速が進む。改めて、この作者の力と作品の持つ力に感歎してしまいます。この壮大な架空宇宙歴史譚がどのように終幕するのか..楽しみに残り2巻を読もうと思います。2018/07/18
金吾
72
大きな変転がある巻です。両雄の内の一人が亡くなるというのはやはりショックなことだなと思いました。ムライ中将の進退はなかなかできないことだなと感じました。2020/07/03
MAEDA Toshiyuki まちかど読書会
63
再読。実はメルカッツ提督が好きなのです。ヤンが死んだ後、続々と落伍者が出る中、「・・・それを教えてくれた人たちに、恩なり借りなり、返さねばなるまい」と言って微動だにしない。充分な兵力があれば、帝国軍の双璧を完敗に追い込むことが出来る技量があるのに、この義理堅さ、不器用さ、実直さがとても魅力的な人だと思います。帝国軍に残っていれば元帥になれたのに同盟に亡命して、中将待遇というところとかも、この人らしいと思います。2015/08/28
けろりん
52
全宇宙に真紅と黄金の旗が翻る。優美な有翼獅子の飛翔の先のただ一点、砂粒にも満たぬ極めて小さな、然し見逃し得ぬ欠落がある。民主主義の理念を、その知識を、後世に残さんとする最後の牙城、ヤン・ウェンリ―と、その麾下に集った反帝国陣営が拠るイゼルローン。圧倒的な劣勢の中、何と言う彼らの明るさ。「それがどうした」「伊達と酔狂でやってるんだ」因縁の回廊に閃光と爆雷が弾け、暴力と死が充溢する。肉体を損ない流された血は鮮やかな虚無の空間に忽ち蒸発する。「魂からこぼれた血は、どこに溜まるのだろう」歔欷の行方は誰も識らない。2020/10/22