出版社内容情報
『時の娘』につづく時間ＳＦの粋。本邦初訳３編に、７編すべて初の単行本収録作！ 巻末の「努力」は海外短編ＳＦ史上にその名を刻む大傑作。
内容説明
時間エージェントは、９世紀の宮殿から『千一夜物語』の語り手シェヘラザードを連れ帰ろうとした矢先、見知らぬ世界へ飛ばされた。さらに彼女に恋をされ―ヤング「真鍮の都」に始まり、時と場所を問わず過去を撮影できるカメラを発明し、何本もの“真実の”歴史映画を製作した男たちの物語―シャーレッドの傑作「努力」まで、本邦初訳２編を含む全７編。すべて書籍初収録！
著者等紹介
中村融［ナカムラトオル］
１９６０年生まれ。中央大学法学部卒、英米文学翻訳家（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐々陽太朗（K.Tsubota）
96
私が読みたかったのはロバート・F・ヤングの「真鍮の都」。時間ものロマンチックSFとして有名な作品故である。読んで満足。やはり私はヤング好きです。もう一編、思いがけなくロマンチックSFの名作に出会ってしまった。「緑のベルベットの外套を買った日」です。ミルドレッド・クリンガーマンという作家は読んだことはおろか名前を聞くのも初めてだったが、いいですねぇ。読んで得した気分、幸せな気分になります。ヘヴィーなSFファンからは馬鹿にされるかもしれないが、私はこうした作品が大好きです。2015/05/11
ざるこ
43
７篇。シェヘラザードを誘拐するも魔神の世界へ｢真鍮の都｣命懸けの狩猟パーティー｢恐竜狩り｣など時空を奔放に旅する現実逃避にうってつけの作品群。古書店で見つけた１冊の旅行日記とそこで出会う男性｢緑のベルベットの外套を買った日｣ベタなロマンスかもだけど結構キュンときちゃう。過去を撮影出来るカメラを発明した男の運命｢努力｣教科書でなぞる歴史は必ずしも真実ではないのだなと実感する。使命に燃える男たちの迫力が圧巻。電話の混線でスパイ容疑をかけられ異界へ｢マグワンプ４｣笑える。ラストの察しはついたが底なしの絶望感が◎2022/04/20
藤月はな（灯れ松明の火）
43
ムアコックの表題作は「凄い」の一言しか出ない。「恐竜狩」はそういう論理か…。でも身勝手なお坊ちゃん、ジェイムズにはこっちも苛々したのでスッキリ。「マグワンプ4」はディストピア・スパイ物のラストが怖すぎる。「地獄堕ちの朝」の善悪を決めるのは結局、自分という指摘が「緑色の…」は時を超えたラブロマンスですね。ほっこりします。「努力」は戦争の抑止力を描いた時空改変物。2016/08/31
波璃子
31
ヤングの「真鍮の都」目当てで読んでみたが他の作品も面白かった。「マグワンプ4」はよく見られる恐怖を感じるオチが良かったし「努力」のストーリーの広がり方には唸らされた。時間SFというジャンルの広さを実感したのでもっと触れてみたいと思う。2015/04/04
亮人
31
時間SF好きとしてはすぐ読むしかないでしょ！白眉はやっぱりリリカルな時間モノが好きなので「緑のベルベットの外套を買った日」。古本屋がカギになる所もイイ。同じく恋愛でも、ヤング師匠は願望充足物語すぎるかなー。表題作も、荒巻義雄「大いなる正午」にも通じる奇抜な時間理論で楽しい。もちろん恐竜好きとしては「恐竜狩り」のドキドキな時代描写も外せない！「マグワンプ4」は、ミュータントというテーマ自体は古く感じるが、時間モノと合わせた所がイイ。末尾を飾る「努力」も重厚なテーマ性で読み応え充分。2013/07/30
