内容説明
銀河の片隅で人類が発見した太古のアーカイヴ。だがそこに眠っていたのは人知を超えた強大な邪悪意識だった。解き放たれたそれは恐怖と混沌を巻き起こし、恐るべき規模で銀河文明を蝕んでゆく。一方この悪魔の星から、最後の希望となる手掛かりを積んで脱出した一隻の船があった。だが不時着した先の緑の星で、彼らは犬型の集合知性体が繰りひろげる抗争に巻き込まれてしまった。ヒューゴー賞受賞最新SF。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
本の蟲
11
95年邦訳のクッソ面白いヒューゴー賞受賞作。調子乗った人類が邪神を復活させて銀河がヤバい!と書くといささか陳腐だが、この情報ネットワーク銀河、宇宙の構造説明だけで大興奮。物理法則が異なる4つの圏からなり、生物、機械問わず思考停止する無思考深部。その外側が低速圏。通信も航行も光速を越えられず、人類発祥の地球もこの圏内。さらに外側、際涯圏。超光速航行、通信が可能で外へ向かうほどコンピュータの処理速度も際限なく上がる。そして超越界にはまさに神のごとき思考演算速度を持った神仙が住んでいる。運よく低速圏脱出し(続①2020/11/08
inugamix
7
なんというハードSF奇想スペオペ…! 壮大なところはやたら壮大、奇想っぷりはファンタスティックなほど、異文化萌え・異生物萌え・幼獣萌え、マジメないい女×野卑ないい男、ロマンス+ハラドキももちろん山盛り。なんでもありすぎヴィンジ百貨店。読み始めこそ情報ぎゅう詰め感にたじろいだが、ページを繰る手は全く止まらないどころかむしろ加速。いいぞいいぞ。下巻に続く。なお後日上下巻を取り寄せたところ、初版につき装画が鶴田謙二でなく涙目。2010/06/29
ヤギ郎
5
壮大なスペースオペラ。人類と犬型知性体の物語。下巻に続く。2022/01/14
スターライト
5
奇形体による文明世界の破壊、中世と見まがう惑星に不時着した船の生き残りであるヨハンナとその弟イェフリ。そしてその惑星で対立する鉄爪族と木彫師。そこにイェフリを救助すべく駆けつけようとするラヴナ。スペース・オペラかと思ったら、びっくり。その宇宙の構造も独創的で、面白い。下巻に期待。2013/05/05
Hidden
4
むちゃくちゃ面白い。銀河の端まで到達した人類が呼び起こしてしまった災厄、そこから逃れた姉弟が不時着したのは首の長い犬が支配する中世レベルの惑星。救難信号を受けた人間と異星人たちは姉弟の救出へ向かう、というお話。様々な異星種族の描写や、独特なSF設定が魅力的。特に姉弟パートで語られる首長犬たちは、なかなかやることなすことエグイ奴らだが、基本犬なのでユーモラスでかわいい。訳者もいい仕事していて、用語の翻訳が「神仙」「際涯圏」とかカッコいいのも好き。巻末にある訳者の世界観解説から読むと理解が早いかもしれない。2019/10/19