内容説明
「かわいそうな少女を生かしてやれる可能性はただひとつ、殻人プログラムに入れてやることです」7歳のおしゃまな女の子を襲った病は、容赦なく彼女を全身運動麻痺にまで追いこんだ。原因不明のためひとり病室に隔離され、涙する毎日。だけど…いつの日か自力で原因をつきとめようと決心した少女はついに宇宙船に生まれ変わった。名作『歌う船』に続く長篇シリーズ、登場。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
本の蟲
10
生存困難な体で生まれた新生児が、脳を殻に、シナプスを機械装置に繋がれた『殻人(シェルパーソン)』として銀河各組織で活躍する<中央諸世界>。筋肉(ブローン)と呼ばれる人員を中に乗せた頭脳船(ブレインシップ)ヘルヴァの冒険を描いた名作SF「歌う船」の続編。今作より他作家との共作に主人公交代と少し心配だったが、全くの杞憂だった。考古学者の両親のもとで育った7歳の少女ティアは、突然の病で全身運動麻痺に。しかし利発で柔軟な知性と、多くの人の協力で特例として最年長の『殻人プログラム』参加。頭脳船として生まれ変わる(続2021/08/13
Masa
10
読了。共著なのでいったいどんな風になるのかとドキドキしながらの読書でしたが、杞憂でした。原作も遜色ないのでしょうけれど、訳者が違っても『歌う船』と似たような感じで読みやすかった。あとがきでマキャフリーが共著という形をとった理由が書かれていたけれど、やっぱりプロットがいいのかなぁ。すごく好みの話で面白かった。子どもに降りかかる災難、というのは読んでいてやっぱり悲しいのだけど、その後の物語で主人公ヒュパティアはそれをしっかり乗り越えていく。やはりシリーズ、追いかけます。2019/10/25
仮面堂
7
「公平じゃないもん。もう未来はないの? まだ始まってもいないのに…」青いテディベアを抱き締めながら―それも自分の腕では出来なくて機械の腕で―泣く幼い少女ティア。頭のいい素敵で可愛い女の子が難病に侵されるというかくも卑怯なまでの悲劇的プロローグから一転、宇宙を駆ける〈殻人シェルパーソン〉頭脳船XH-1033として新たな人生を踏み出してからの爽快な冒険。その中で相棒の〈筋肉ブローン〉との関係の変化も程好いロマンスとしてそれに寄り添う。SFではあるけれど、柔らかく優しい物語。2016/11/27
Radwynn
7
原因不明の病に冒され、殻人(機械の体を持つ頭脳)となった少女ティア。彼女の選んだ路は頭脳船、パートナーとなる筋肉(肉体を持つ非殻人=人間)と共に、大宇宙への第一歩を踏み出す──『歌う船』の少し後の時代、そして『歌う船』のヘルヴァが産まれてすぐに殻に入ったのに対し、ティアは7歳までを両親との愛に充ちた日々を送っていた、という大きな違いがあります。が、『歌う船』同様、SFというよりリリカルな、えー…レンアイモノです、ええ、私の苦手なレンアイモノです(笑)しかし何故かコレは嫌じゃないんだなあ(笑)2012/01/21
NezMozz
5
これはハーレクインロマンスも裸足で逃げ出す、超ド級のロマンスの物語だ。SF的ワクワク感は前作のほうが上だが、それを補ってあまりある幅を持つ。 出会いのシーンのアレックスなど、少女が夢見る、ひたむきに自分の気を引こうとする誠実で魅力的な男の子そのものだ。脳を宇宙船と繋ぐというSFのアイディアと、少女のロマンスは対極にあるが、奇跡の両立を果たしている。ぶつぶつ言いながらサーヴォでアレックスの寝室を片付けてやるティアには、文句を言いつつ愛する男の世話を焼きたい女の夢が詰まっている。2009/07/16