内容説明
幻想と叙情の詩人ブラッドベリの魔法の力で、読者はこの世には見えないものを見せられ、触れられないものに触れることができる。読者は、あるときは太古の昔に誘なわれ、またあるときは突如として未来の果てまで運ばれてゆく。「太陽の金色のりんご」「霜と炎」「霧笛」など、ブラッドベリ自身が16編を自選した珠玉の短編集。
著者等紹介
大西尹明[オオニシタダアキ]
1918年生まれ。早稲田大学英文科卒業。明治大学教授。2001年歿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
191
absintheも生まれる前のSFで懐かしい感じのする短編集。小4の娘に薦められた短編が収められているので読んでみた。ジュブナイル小説として書かれたようで、視点人物に溢れんばかりの若さを感じる。『霜と炎』姉が最後に助かったかどうか明記されてないが、娘と二人で助からなかっただろうなと話した。素晴らしいのは『霜と炎』だったが、他の作品からも、とにかく至る所に「少年らしい憧れ」を感じる。2021/04/05
コットン
85
萩尾望都のコミックからの原本回帰で、ヤングアダルト向けの本。「あいつは一番深い海の奥底に行っちまって、また百万年じっと待つのだ。」という永遠とも言える時を待つ『霧笛』がやはり印象に残る。そして『「ウ」は宇宙船の略号さ』など若者特有の家族や友人に対するやんわりとした感覚が人間愛を感じました。2017/01/06
NAO
81
【「地球・宇宙・自然週間」参加」】16編のそのほとんどが、宇宙または宇宙船を舞台にしている。ブラッドベリの作品は、宇宙を舞台にしてはいるけれども、その内容は宇宙の珍しさ、そこでの冒険といったものではなく、家族を描いたものが多い。そう、ブラッドベリの宇宙を舞台にした短編は、繊細な家族の物語なのだ。抒情的な言葉で描かれた微妙な心の機微が、夜空の星のようにきらめき、揺らめいている。「ウは宇宙船の略号さ」「宇宙船」「いちご色の窓」のなんという優しさ・物悲しさ。一方、同じ宇宙を舞台にしながらも、「亡命した人々」は⇒2019/05/05
ずっきん
79
「ウは宇宙船の略号さ」と「宇宙船乗組員」が、何度読んでも好きだ。幻想と抒情のSF詩人、ブラッドベリが綴る、憧れ、別離、打ち寄せるさざ波のような余韻。そこが好きなのならば、SFでなくても良さそうなものだけれど、舞台や小道具が現実にないものだからこそ、憧憬の念を抱くのだ。もう、抱きまくりである。実は、翻訳で、んー?となる箇所が多いのだが、それすら凌駕してくる抒情。わたしの読書傾向を作り上げたのは、デュマとヴェルヌだと思っていたけれど、ブラッドベリも外せないなあ。通しで読んだのは学生のとき以来かも。酔うわあ。2021/05/05
かりさ
76
レイ・ブラッドベリ『ウは宇宙船のウ』読了。SF作家ながら叙情的な詩人(と勝手に思っている)ブラッドベリの紛うことなきSF世界作品で、寝食忘れては言い過ぎですがもう夢中で読みました。SFなのになんでこんなに胸を締め付けられるの?泣きそうになるの?…と感情に咽ぶ読書。もう物語全部が愛おしい。『ウは宇宙船のウ(R is for Rocket)』のタイトルは本当に秀逸。宇宙行きのチケットを握ってブラッドベリの旅は続きます。2019/01/28