創元SF文庫<br> モロー博士の島

創元SF文庫
モロー博士の島

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  • サイズ 文庫判/ページ数 238p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784488607074
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

内容説明

海で遭難した主人公は一隻の貨物船に拾われる。船は各種の動物を積み、とある島にむかっていた。たどりついた先は、奇怪な住人たちが棲む絶海の孤島。しかも島の主は、十年前に消息をたった高名な天才生理学者モロー博士だった!博士が人知れず創造しつつある新しい生命の姿とは。現代の遺伝子改造を予見したウェルズの傑作を、綿密な校訂研究に基づき完全訳出した新訳決定版。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

284
H・G・ウェルズの古典的SFとして名高い1冊。本書は、彼が書いたいくつかのSFの中でも、当時の科学の水準を最も強く反映している。ウェルズは、当時ダーウィンを擁護していた高名なT・H・ハクスリーのもとで学び、いわば進化論の最前線にいた。すなわち、種の可変性といった、新しく斬新な考え方が本書のバックボーンとなっている。そうした史的価値は認めよう。しかし、その一方で白人(特にイギリス人)の他の人種に対する優位性や、モロー博士が創造主(そうではあるのだが)として「主」と崇められるのには違和感もまた否めない。2016/01/18

Tetchy

133
マッドサイエンティストによる禁断の研究といえばフランケンシュタインが有名だが、ウェルズは舞台を絶海の孤島にし、そして狂える科学者によって次から次へと半獣半人の怪物たちを生み出すワンダーランドにして、更に発展させた。この魅力的な設定が映画人を刺激し、何度も映画化されている。モロー博士の島に登場する数々の獣人は仮面ライダーの怪人を想起するが、もしかするとこの作品から着想を得たのかもしれない。なぜなら仮面ライダー自体がバッタと人間を組み合わせた人造人間なのだから。そう、ウェルズ作品は映画ネタ・特撮の宝庫なのだ。2021/09/05

ケイ

131
人と獣を掛け合わせたら、獣性が勝つのか人間性が表に出てくるのか。そこのところが描ききれていなかったように思う。ガリバー旅行記では、むしろ動物の方が人間よりも救われるべき者であったが、この作品では獣性は完全にマイナスのものだ。獣性はあくまでも人間性より扱いにくいものであり、最後には野生化・狂暴化して現れる。モロー博士が自ら生物を生み出すことによって神になろうとするも失敗し、記録の書き手がモーゼのように君臨するかのように見えるが、人間ごときが創造したものは生存するべきではないと言いたいのかもしれない。2016/05/07

扉のこちら側

95
2016年699冊め。【196/G1000】人間が神になろうとする傲慢とその報い。ドラマや映画ではさまざまなバージョンがあるけれど、原作はこうだったのか。人間や動植物に対する遺伝子操作という問題で100年後に議論されるような主題を、どうしてウェルズはこうも膨らませられたのか、作品を読むたびにいつも驚かされる。教会が今よりももっと保守的で力を持っていただろう時代なのに。2016/09/06

NAO

54
神になりたかった男、モロー博士。だが、モロー博士には「神の手」はあったが、「神の心」はなかった。恐怖によって支配されていた改造された動物たちが、やがてその本性を立ち返らせて、無理やり神とあがめさせられていたものに反撃してくるのは、分かりきったことではなかっただろうか。モロー博士の島もなかなか怖いが、ロンドン帰還後のエピソードもなかなかブラックで怖い。2016/07/09

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