出版社内容情報
孤独な中年女性ソニアは、ある日家の前に倒れていた美しい青年を見るに見かねて家へ招き入れる。文無しで家族も養えないほど困窮したその青年は、ソニアの家に飾られた芸術品に優れた鑑識眼を発揮し、また立ち居振る舞いも洗練されたものだった。その日から青年やその家族と交流を持ち始めたソニアだが、徐々に青年は彼女の生活に立ち入り始め……江戸川乱歩が〈奇妙な味〉の代表例として挙げた名品「銀の仮面」ほか全13篇を収録する。繊細な技巧が編み出す恐怖と不安に満ちた日本オリジナル傑作選。
内容説明
裕福だが孤独な女性ソニアは、ある日無一文の青年を哀れみから家に招き入れ、食事をふるまった。半月後、彼はソニアの家を再訪するが、自分の描いた絵を購入するよう執拗に求める…不気味な侵入者がやすやすと善意を食い荒らす様を描き、江戸川乱歩によって「奇妙な味」の傑作と絶賛された表題作をはじめ、不意に立ち現れる不安と恐怖を見事な技巧で切り取った13編を収録する。
著者等紹介
倉阪鬼一郎[クラサカキイチロウ]
1960年三重県生まれ。早稲田大学卒。87年、『地底の鰐、天上の蛇』で作家デビュー以降、創作を中心に活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
46
大都会を“アスファルト・ジャングル”とはよく言うが、本当に獣が闊歩しているのを見る人は珍しい。そのうちの一人がイギリス人のホーマーだった。 伏線はあった。道に迷い、暗闇から二つの眼を光らせた虎に睨まれた夢を見たのだ。ところがその夢は三日経つと忘れてしまう。NYに行ったホーマーは大都会にも慣れ友人もでき、順調に暮らしていた。ところがある時黒人に追い越された事がきっかけで、再び虎の夢を見るようになってしまった。今度は何日経とうが虎は記憶から去ってくれない。次第に心身に異常をきたしたホーマーは…。2020/04/01
かわうそ
34
有名な表題作を筆頭になんとなく厭な感じがじわじわと日常を浸食し、それに伴って心の歪みが少しずつ大きくなっていく描写が素晴らしい。意外な方向にオチがつく話も多くて面白かった。お気に入りは「銀の仮面」「敵」「トーランド家の長老」あたり。2020/01/25
あたびー
32
#日本怪奇幻想読者クラブ 筆者の作品をまとめて読んだのは初めて。特に表題作「銀の仮面」は初読だったので衝撃を受けた。厭な話!小金持ちの老女はひょんなことから(あるいは狙われていて)美青年に情けをかけ、それをとば口に彼の一族に生活のすべてを蝕まれる。彼女の気の弱さ、世間体を気にする見栄、当初男の見てくれに惹かれたという負い目が、奴らを追い出すことを不可能にする。何と言う冷徹な人間観察眼だろう。しかし読み進めていくと更にウォルポールの様々な切片を目の当たりにすることに。2020/03/27
くさてる
28
まさに「奇妙な味」というか、読後にそわそわとして落ち着かなくなるような、人間心理の綾を掬い取ったような短編が多い。いわゆる「厭な話」とニアミスするけれど、それだけではないような、本当に、人間ってそんなことしてしまうよね、と思うような、でも奇妙な話。書籍でも読んでいたのですが、文庫版に追加された2編が同じクリスマス話ながら、真逆の二作で、どちらもとても良かったです。読み応えのある短編集です。2020/03/04
花林糖
21
短編13話。江戸川乱歩が「奇妙な味」の作品と呼ぶ有名な作品「銀の仮面」は寄生虫の様な一族に母屋を徐々に乗っ取られる話でインパクト強すぎでした。「敵」「トーランド家の家老」「奇術師」「中国の馬」「雪」がお気に入り。(GWだよ全員集合!奇妙な味海外読書会’22)2022/05/08