内容説明
東京都第七特別区、通称バルーン・タウン。人工子宮の利用が普通になった世界の中で、それでも敢えて母体での出産を望む女性たちが暮らす、あらゆる犯罪と無縁の長閑な別天地―の筈なのに、なぜか事件は次々と起きる。前代未聞の密室トリックや暗号「踊る妊婦人形」など、奇妙な謎に挑む妊婦探偵・暮林美央の活躍を描いて賞賛を受けた松尾由美のデビュー作。シリーズ第一弾。
著者等紹介
松尾由美[マツオユミ]
石川県生まれ。お茶の水女子大学文教育学部卒。1989年『異次元カフェテラス』を刊行し、91年には「バルーン・タウンの殺人」がハヤカワSFコンテストに入選
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
タカギ
27
ムーブメントになりつつある特殊設定ミステリの先駆け的な感じ。単行本が出たのは1994年。今読んでも新しい。人工子宮(AU)の使用が一般的になった世界で、あえて母体での出産を望む女性たちが暮らす地区〈バルーン・タウン〉。そこに住む型破りな妊婦・暮林美央が探偵役を務める。短編が5編。有栖川有栖先生の解説がとても素晴らしくて、絶対に読みたくなる→“立派なSFであり、洗練された都会的ユーモア小説であり、ピリッと風刺が効いたジェンダー小説であると同時に、非常に良質の本格ミステリ”。ね?読むしかないでしょ?2021/03/22
coco夏ko10角
21
第1弾。人工子宮を利用するのが一般的となった世の中、母体での出産を希望する女性たちが暮らす第七特別区での事件。ならではな設定のミステリ、とても面白かった。シリーズ続巻もそのうち。2021/09/23
はんみみ
18
設定、タイトル、表紙絵、探偵役の態度、どれをとっても国産モノとは思えない。全体に漂うシニカルな目線も国産ぽく無くて、なかなか楽しめた。謎解きがしっかり設定の上にたってるのは上手いなぁ 作者がこの世界を気に入ってるんだろうなと感じた。2015/02/20
亮人
18
人工子宮が普及した未来というSF設定のもと、自然妊娠を希望する妊婦だけが集まって暮らす東京の特区を舞台にしたミステリ。ハヤカワSFコンテストに入選しハヤカワ文庫JAから刊行された作品だけあって、秀逸なSFミステリとなっている。殺人や密室のトリックや動機も、しっかりこの特殊SF設定の上に立ったもので、精緻に作られおり素晴らしい。また「亀腹同盟」「なぜ助産婦に頼まなかったのか?」など古典ミステリを上手く本歌取りしているところもニクイ演出だ。妊娠・出産・育児など女性について考えさせられるジェンダーSFでもある。2013/01/10
みみずく
16
人工子宮を利用して子どもを持つことが普通になった世界で、あえて母体での出産を望む女性たちが暮らす第七特別区、通称バルーンタウンがある。SF的な舞台を用意することで現在の状況を風刺していて痛快な部分もあったけど、全方位にその風刺の矛先が向いていて、作者の意図がよくわからないところもあった。主人公は妊婦で素人探偵という斬新な設定。謎は古典ミステリのあれこれを元にしていて面白かった。(「赤髪同盟」は「亀腹同盟」と言った感じ)他に密室の謎もあったり上手くバルーンタウンという設定が生かされていた。2014/05/09