内容説明
新年を迎えたシェトランド島。孤独な老人を夜に訪れた黒髪の少女は、四日後の朝、雪原で死んでいた。真っ赤なマフラーで首を絞められて。顔見知りばかりの小さな町で、誰が、なぜ彼女を殺したのか。ペレス警部の捜査で浮かびあがる、八年前の少女失踪事件との奇妙な共通項とは?現代英国本格派の旗手が緻密な伏線と大胆なトリックで読者に挑戦する、CWA最優秀長篇賞受賞作。
著者等紹介
玉木亨[タマキトオル]
1962年東京都生まれ。慶應大学経済学部卒。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
364
殺人事件の真犯人と、その動機とを解明してゆくという、いわば本格派ミステリー。ミステリー初心者たる私は、当然ながら作家によって誘導された人物を犯人だと思っていてハズレ。小説の成功の最大の要因は、絶海の孤島シェトランドを舞台に選んだことにあるだろう。しかも、その地が最も厳しい気候条件に晒される冬が選ばれている。第2の要因もまた、閉ざされた島の濃密な人間関係にあり、これを解きほぐしてゆくのがマグナスである。彼はまさしく、トリックスターの役割を担っていたのである。なお最後の数行はまことに心憎いばかりの演出だ。2017/03/24
W-G
315
とても硬派な警察小説。玄人好みとも地味ともいえる落ち着いた文体は、退屈スレスレなので読者を選ぶかもしれない。解説にもあるように、シェトランド島という非常に小さなコミュニティ内での、近しい人間関係の中で事件が完結する点が魅力となっており、真相にたどり着くまでの手順は、実は後半のある人物の証言だけに頼りきっていて捻りが足りないのだが、犯人の意外性や島の雰囲気がとても良い。シリーズ物としても、作品を跨いで興味を引っ張れそうな人物間の関係がたくさん仕込まれており、続編でも楽しませてもらえそう。2022/12/14
🐾Yoko Omoto🐾
148
季節は冬、雪雲に覆われたように重たい空気感が全編に漂う。イギリスの最北端に位置するシェトランド島。島の住人は皆が既知の仲であり、行動の全てが筒抜けとなる距離感にある。そんな島で起こる殺人事件と8年前の少女失踪事件。人々の噂や思い込みや嘘の中に真実が埋もれていく様が4人の多視点にて描かれてゆく。人の親である者と人の子である者たちが織り成す様々な家族関係、その奥にある確執や秘密、ありふれた日常の中に抱え持つ閉塞感や孤独感。それらが重なり膨らみ形を変え非日常へと動く展開が、実に丁寧に描かれた上質のミステリ。2016/03/19
中原れい
132
時間はかかったが面白く読んだ。刑事をはじめ人物の内面や取り巻く環境など細かいことがよくわかって読みごたえがあった。狭い社会でみんなが知り合いの社会では良い事ででさえ突出すると反感がおきやすく、秘密は守られやすい。そういうなかではわかってもどうにもならないことは多いだろうに刑事はよく頑張った。孤独な老人、気にしない若者…大鴉は誰になぞらえられていたのだろう。野垂死にと助けられてから死ぬのとどちらが残酷なのか。皆に示された問題だと思う。牧場買って引っ込むのは刑事共通の夢かなあかなわないけどペレスもピアも。2023/03/09
ケイ
129
「シェトランドシリーズ第一作」 イギリスの北の海、ほとんど ノルウェーの方にある島。そこはイギリス本土とは違う小さな島。余所者がはっきりしているところ。若い女の持つ毒や残忍さをはっきりと見せつける。2018/07/15