創元推理文庫<br> 人魚とビスケット

  • ポイントキャンペーン

創元推理文庫
人魚とビスケット

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 286p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784488211028
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

内容説明

1951年3月7日から二カ月間、イギリスの大新聞に連続して掲載され、ロンドンじゅうの話題になった奇妙な個人広告。広告主の「ビスケット」とは、相手の「人魚」とは誰なのか?それを機に、第二次大戦中の漂流事件に秘められた謎が解き明かされていく…。現実の新聞広告から生み出された驚くべき物語。海洋冒険小説とミステリの見事な融合として名高い幻の傑作、新訳決定版。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

chiru

82
桜庭一樹さんの『読書日記~少年…』で紹介され、好奇心を鷲掴みされた本。新聞に掲載された奇妙な広告『人魚へ。とうとう帰り着いた。連絡を待つ。ビスケットより』イギリスで実際に掲載され話題になった個人広告の謎。人魚に呼びかけるビスケットの目的は? 人魚の素性は? けだものと称されるナンバー4とは? 謎だらけの魅力的な導入から一転。女性一人を含む4人の14週に渡る漂流劇が幕をあけます。海上の生存競争が寓話的に描かれ、いくつもの伏線は最後まで顔を見せない。最後の意表を突く結末も含め、大満足の傑作。 ★52019/04/29

市太郎

71
実在した広告の「人魚とビスケット」のやりとりから、着眼を得て構想し完成した本作はちょっと変わったミステリで海洋冒険小説がストーリーの基盤という事もアリ、サバイバルにケツの穴も引き締まるほどの緊張、興奮、胸躍る。ラストには二重三重の謎が明かされていきミステリとしても大いに満足するが、むしろ私は漂流中の人間模様こそを書中の宝玉として崇め奉りたい。どら〇モンじゃないけど四人それぞれに役割があり、ミステリ部分が明瞭になると善悪について思わず考え込んでしまう、という奥深さもグッドです。あと、タイトルが素敵ですね。2015/05/21

ざるこ

52
他人の秘め事や隠されたドラマほどそそられるものはなく。新聞の個人広告欄に続けざまに投稿される「ビスケット」から「人魚」への意味深なメッセージ。この2人と「ブルドッグ」「ナンバー4」の間にいったい何があったのか。男3人、女1人での漂流の物語。見渡す限りの海の上の狭い空間。ストレスも緊張も飢えも乾きも苛酷を極める日々。人魚に安らぎを求めるのも頷ける。「今こそ死は無上の恵み」生きてることの方がつらいことがよくわかる一文。最後人魚の正体には納得。はまって読めるけど結末がちょっと…。重厚さが失われてなんか惜しい。2020/08/08

藤月はな(灯れ松明の火)

52
とある新聞で掲載されていた尋ね人。探しているのはビスケット、彼が探す相手は人魚。奇妙なやり取りに興味を抱いた者はビスケットと接触し、海上であった出来事を知ることになる・・・・。なぜ、人魚は接触を拒むのか?ジェリコーの「メデューズ号の筏」やポーの「アーサー・ピム・ゴードン」、メルヴェルの「白鯨」を連想させるような飢餓と渇き、鮫に怯える、海上での鬼気迫る極限状態と人道性の薄れと欲。それでも毅然としている人魚が美しいです。船が沈没した理由に驚愕します。最後がアガサ・クリスティの「最後の降霊会」めいた暗示が怖い。2013/06/08

geshi

33
冒頭の新聞広告を使ったやり取りのミステリアスさがまず魅力的。話が始まるまではちょっとダラッとするが、漂流の語り方になると一気に飲み込まれて、4人と一緒に海上にいる気分になる。狭い救助ボートの上で究極的にそぎ落とされた人間関係の、飢えと渇きに苛まれるギリギリの境の中で生まれる諍い・不信・ヒエラルキー・一片の心の支え。人間の生々しい部分が精緻に描かれているから、物語として古びていない。ゾッとしつつも切れ味の良い結末がこの小説のジャンルをミステリたらしめている。2021/11/09

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/30904
  • ご注意事項