内容説明
チャンスに恵まれない芸能エージェント、ビミー。彼のもとに転がりこんできた天才ボクシング・カンガルー、マチルダは、ひょんなことから世界チャンピオンをKOしてしまった!たちまち新聞社からマフィアまでを巻き込む大騒動が勃発!一匹のカンガルーに夢を賭ける男たち。その奇想天外な冒険とその意外な顛末を、痛快に、そして心優しく描くギャリコの傑作、ついに登場。
著者等紹介
山田蘭[ヤマダラン]
英米文学翻訳家。訳書にP・ギャリコ「幽霊が多すぎる」、M・テム&N・ホールダー「メイキング・ラブ」「ウィッチライト」、J・ニズビット「叫びの序曲」などがある
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナーキー靴下
66
天才ボクシングカンガルー・マチルダが世界チャンピオンと対決、新聞社からマフィアまで巻き込んだ大騒動に、と現実離れした展開なうえ、マフィアでさえ悪人とは思えない優しい世界。それなのに安っぽいエンタメ作品とは一線を画すリアリティを感じるのは、著者のスポーツ記者としての経験ゆえか。狡くて汚いブロードウェイの策謀をユーモアであぶり出しながら、皮肉に終止することなく、人間愛に溢れた物語を紡ぎ出すギャリコは本当に凄い。『ジェニィ』や『スノーグース』のような心の深奥を突く作品とは趣が異なるものの、やはりギャリコ。傑作。2023/08/10
yumiha
44
カンガルーのマチルダがミドル級チャンピオンとボクシング対決!!これだけでもワクワクなんだけれども、そこへ辿り着くまでに何人かのボクサーとも対戦しなければならない。そのうえチャンピオンの後楯にマフィアがいるから、次々と妨害工作が待ち構えている。マチルダにボクシングを教えたビリーとのやり取りは、動物好きにはたまりまへん。そのニュースを記事にする新聞記者パークハーストには、ギャリコの経験が生かされている?そんなドタバタ劇かと思って読み進めていたら、ラストに思わぬどんでん返し。「誠実」とは何か?と問われながら。2021/11/06
いちろく
31
紹介していただいた本。ボクシングの天才カンガルーマチルダが、偶々居合わせたミドル級の世界チャンピオンをKOした所から大きく動く物語。正直、第一印象はカンガルーボクシング?お馬鹿映画の様な設定ですか?でしたが、マチルダの魅力と物語の面白さに引きこまれて、いつの間にか夢中に。序盤のチャンピオンとの再戦の伏線から大筋は読めたと思ったのですが、只では終わりませんよ。同著者の雪のひとひらと同じぐらい、読了後に心がジーンとしました。続きが気になり待ち時間や移動時間に手放せない1冊でした。紹介感謝!2016/08/21
北風
11
マチルダかわいい。そして、かわいそう。動物虐待というのは行き過ぎだと思うけれど、やっぱりマチルダの最後はかわいそうだな。あれでよかったのか? この話はかわいいだけじゃなくて、陰謀渦巻き、カンガルーそっちのけで、互いの裏をかきあう泥仕合。その展開と応酬がすごい。いいもんのパークハーストは敵の攻撃を見事に切り返したけど、最後はノノに軍配が上がったかな、と思う。そして、なによ、ショーン・コネリーって!? いいのか、名前出して?2017/02/25
あひるのふせん
2
元英国ボクシングチャンピオンが育てた天才カンガルー・マチルダが、現ミドル級世界王者をKOしてしまったところから始まる奇想天外な物語、という粗筋から、これほど細部まで面白さが行き届いたわんぱくで堅牢なストーリーが味わえるとは思いませんでした。マチルダの描写がキャラクターナイズされていないのも愛着が持て、トレーナーも記者もマフィアのボスまで人物造詣が魅力的で、企むのも見抜くのも出し抜くのも悩むのも、それぞれ必然性がある質の高い群像劇。特に、読んだ方なら分かち合えると思うが、パトリック・アロイシャスが大好き。2023/05/21