内容説明
裁判官による説示。被告人ハリエット・ヴェインは恋人の態度に激昂、袂を分かった。最後の会見も不調に終わったが、直後、恋人が激しい嘔吐に見舞われ、帰らぬ人となる。医師の見立ては急性胃炎。だが解剖の結果、遺体からは砒素が検出された。被告人は偽名で砒素を購入しており、動機と機会の両面から起訴されるに至る…。ピーター卿が圧倒的な不利を覆さんと立ち上がる第五弾。
著者等紹介
セイヤーズ,ドロシー・L.[セイヤーズ,ドロシーL.] [Sayers,Dorothy L.]
イギリスの作家。1893年オックスフォードに生まれる。オックスフォード大学を卒業後、広告代理店でコピーライターの仕事をしながら、1923年デビュー作にして貴族探偵ピーター・ウィムジイ卿もの第一長編となる『誰の死体?』を発表。そのモダンなセンスにおいて紛れもなく黄金時代を代表する作家であり、名作『ナイン・テイラーズ』を含む味わい豊かな作品群は、今なお後進に多大な影響を与え、ミステリの女王としてクリスティと並び称されている。57年没
浅羽莢子[アサバサヤコ]
東京大学文学部卒、英米文学翻訳家。2006年歿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
351
ピーター・ウィムジイ卿シリーズの第5弾。私にとっては『誰の死体?』に次いで2作目なのだが、前作と同様に探偵のウィムジイ卿に共感できるかが、やはり大きな鍵となるように思われる。ここまでの4作を読んできた読者たちには彼の言動が好ましく映るのだろうが、私はどうもウマが合わないようなのだ。それは、幾分かは(あるいは多分に?)訳のせいでもあるような気もする。今回のヒロインのハリエット・ヴェインに一目惚れすることといい、その故か思い込みとしか思えない肩入れも何だか煩わしく思えてくるのである。2022/10/01
Kircheis
234
★★★☆☆ ウィムジィ卿シリーズ第5作。 ウィムジィ卿の想い人ハリエットの初登場作品。 犯人は分かりやすく、中盤辺りでほぼ明かされるので、謎解きの楽しさやカタルシスは味わえない。反面、キャラの個性や会話の小気味よさはいつも通り楽しめる。 パーカーとメアリの結婚や、アーバスノットの結婚など、ウィムジィ卿以外の皆様にも春が訪れており、女流作家らしいロマンスが存分に描かれている。 ただウィムジィ卿がハリエットのどこにそんなに惹かれたのか全く分からず、個人的にはあまりしっくりこなかった。2021/12/11
MICK KICHI
87
コニー・ウィリスの「犬は勘定に入れません」の魅力的な女性のモデルになったのが、ハリエットだと知って手に取ったら、あまりの面白さに虜になってしまった。貴族探偵ウィムジィを、一目で落とした魅力。美人ではなく、 蜜蜂のような肌 にユーモア感覚がある 感じのいい声 そしてにじんだような変わった眼と評されるハリエットとウィムジィのコンビの第1作。ミステリーとしての仕掛けも充分。<猫舎>という女性だけのプロ集団の凄ワザぶりや、薬物やオカルト知識の絶妙な使い方。中々他には味わったことがない面白さが満載されている。2019/08/24
セウテス
76
ピーター卿シリーズ第5弾。〔再読〕作家のハリエットは元恋人のフィリップを、ヒ素により殺害した容疑で裁判にかけられていた。彼女に恋したピーター卿は、彼女の無実を証明しようと捜査を始めるが、判決までは1ヶ月しか無く状況証拠も揃っている状態であった。本来ならば、迫り来る時間との戦いでピリピリしたサスペンスに仕上がる展開なのですが、このシリーズはキャラの魅力で読ませる作品。洒落たセンスの良い会話が愉しくて、登場人物たちが活き活きと描かれている。ピーター卿配下のクリンプスン嬢とマーチスン嬢の、活躍ぶりが最高です。2016/06/08
NAO
74
ピーター卿シリーズにハリエット初登場。殺人事件の容疑者である彼女に惚れ込んで捜査を始めるピーター卿の一途さがほほえましい。専属の女性捜査員集団まで持っているピーター卿の金持ちっぷりも嫌味に感じることもなくただただ面白いのは、やっぱり彼の人柄ゆえだろう。2020/02/24