感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
55
貴族探偵ピーター卿の短編集第一弾。特徴でもあります、絶妙の話術が光る七篇です。と言いたいのですが、長篇「誰の死体?」の様な、軽快な切れ味がたりません。これは、長篇を翻訳している浅羽莢子先生のセンス、技量の賜物なのでしょうか。セイヤーズ作品はクリスティ氏と違って、トリックやスリルある謎解きよりも、目を見張るアイディアとウィットに富んだ洒落た会話の面白さで、読ませてくれる作品です。この短編集は、少々怪奇趣味を強く翻訳している様に感じられて残念です。セイヤーズ作品を初めて読む方は、是非長篇から読んで欲しいです。2015/03/16
藤月はな(灯れ松明の火)
37
本格推理に登場人物たちの小粋なユーモアとちょっぴり、ハラハラさせるスパイスが効いたピーター卿シリーズ。この巻ではドッペルゲンガーや幽霊などの怪奇現象としか思えない事象をどのように解明するかがポイントになっている珍しい作品。真相は現代で考えれば「なーんだ」と思えるものでも当時ではあり得なさそうであり得るという怖さがあったんだろうな。表紙に描かれているピーター卿の格好良さは∑(゚Д゚)2013/09/04
kate
29
ピーター卿の活躍を描いた中短編集。全体的に怪奇趣味が多く取り入れられているが描写はくどくなくテンポ良く進み飽きが来ず読みやすい作品。ピーター卿はホームズ等の名探偵とはまた違った愛嬌があるのが良いですね。2014/07/16
geshi
23
この短編集は怪奇色が強めで推理は薄め。ネタがまんますぎるドッペルゲンガーもの『鏡の映像』。悪霊つきをピーター卿が魔術師となって解決する『ピーター卿の奇怪な失踪』。遺された胃袋を追う犯人がマヌケな『盗まれた胃袋』。この時代ならではのトリックの『完全アリバイ』。謎解きされた後の方がむしろ怖い『銅の指を持つ男の悲惨な話』。わが子が生まれても探偵活動する『幽霊に憑かれた巡査』。首のない馬車が走り回る現実的理由の『不和の種、小さな村のメロドラマ』。ピーター卿はいつでもどこでもピーター卿なのが嬉しい。2014/07/07
Tetchy
21
正直な感想を云えば、驚きました。島田荘司が本格の定義として提唱している「冒頭の怪奇的・幻想的な謎、そして後半の論理的解明」を正に実践しており、こんな本格が過去、西洋にあったのかと再認識させられた次第。ドッペルゲンガーに悪霊憑き、そして首のない馬車とゴシック風味満載である。色々読みこなした現代においてはそれらの結末は想像の範疇で瞠目させられるものではないにしろ、これほどのものがまだあったことが素直に嬉しい。2009/07/08