内容説明
英国本格派の雄クロフツが満を持して発表した、アリバイ破りの名手フレンチ警部のめざましい業績を綴る21の短編を収めた作品集。「いずれも殺人事件であって、しかも、犯人は必ずまちがいをして、そのためにつかまっている。そのまちがいに、読者が事前に気がつけば読者の勝ち、気がつかなかったら、筆者の勝ちというわけである」と、読者に挑戦状を叩きつける。
著者等紹介
クロフツ,フリーマン・ウィルス[クロフツ,フリーマンウィルス] [Crofts,Freeman Wills]
1879年アイルランド、ダブリン生まれ。鉄道技師であったが、病を得て長く休養した間に構想した『樽』を1920年に上梓し、好評を博す。1957年没
向後英一[コウゴエイイチ]
1908年9月生まれ。東大法学部卒。1973年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
109
★★☆☆☆ フレンチ警視の短編集。 緻密な捜査と人間模様を描くのに長けたクロフツだけに、短編ではその良さを発揮できていないように思える。 しかも「犯人のミスを読者が当てるには無理があるのでは?」と思われるものもチラホラ。 ちなみに人間関係や動機は、これまでの長編で使われたものが転用されていることが多い。 また犯人にモノマネが得意な奴が多く、何度目かに「お前もかい!」と突っ込んでしまった(^_^;) どれも小粒だが、中では『写真』と『ブーメラン』が好みなオチだった。2019/12/09
セウテス
80
【フレンチ警部短編集】第1弾。〔再読〕フレンチ警部が活躍する、21編の倒叙ミステリの短編集。一作一作は、ショートショートなみに本当に短めで、犯人が犯したミスは何かを推理する形式。似たような設定が多い事と、推理しても分からない作品が在る事は、少し残念に思う。クロフツ作品というかフレンチ警部シリーズを、アリバイ崩しを楽しむ作品とする読者には、チョッと肩すかしな短編集だろう。私的には刑事コロンボじゃないが、倒叙ミステリは大好きなジャンル。ただ本作を読むと、倒叙ミステリは長編だからこそ良いスタイルだと確信する。2021/01/12
中原れい
52
やっと読めた!とても短い話ばかりなので、基本倒叙形式で語り手を工夫して変化を出している。不思議と飽きないが、弱気でも強気でも天然でも身勝手な考えに落ち込んでしまった犯人ばかりなので当てられて長い事かかった。訳者無双という気がする…面白かった!2021/05/26
たち
35
どの話も、犯人が短絡的で呆れます。お金に纏わる話が目立ちました。中でも、『ブーメラン』と『薬壜』の 主人公はあまりにも勝手で腹が立ちました。出来れば、フレンチ警部はじっくりと、長編で読みたいです。2019/12/23
Inzaghico
10
時代を感じさせるのが犯罪者の変装。たいてい頬に「含み綿」を入れて頬をふくらませる。イメージとしては、昔の豊頬手術した宍戸錠(古っ!)である。ほとんどの話で、犯罪者がこの含み綿を使っているのだが、これはいったいどんなものだったんだろう。綿って湿ると小さくなってしまうんじゃないかと思うんだけど。 いつも殺人のシーンはあっさり1、2行で片づけるのは、クロフツの美学なんだろうか。その前後の準備段階や、事後処理では入念な描写が続く。個人的にはやっぱり長編のほうがいいなあ、と思う。2019/10/31