内容説明
鏤骨の文体、トリッキイな構成、縦横の想像力によって奏でられてきた中井ワールドは、作家の実人生と引き換えに豊饒な収穫の時期を迎えることになる。珠玉の短篇集『夜翔ぶ女』『名なしの森』、戦中戦後という時間への愛憎を示した『金と泥の日々』『他人の夢』、ただ光だけが充ちている名品『夕映少年』を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふくしんづけ
8
厚い以上に、これまでで最もとっつきにくさのある巻と感じた。『とらんぷ譚』などでも、中井英夫の作品にはある程度どこか無愛想なところがあったのだが、今回は不親切さといったものも顕著だったような気がする。らしさは随所に見られ、これまで描いてきたことの反復もある。しかし、安易に溶け合うことを許されない、厳格な感じがある。一方でそれは、職人としての精巧さ、小説の役割への誠実さであると思う。幻想小説とは、安易な私小説紛いの、我武者羅な自己表現とは違うと、異界への誘惑と相反する、現実の放棄しきれない代償も、同時に→2021/08/27
氷沼
1
『夜翔ぶ女』『名なしの森』『金と泥の日々』『他人の夢』『夕映少年』を収めた作品集。何も言うことは無いです、素晴らしい。 特に好きなのは『名なしの森』に収録された「盲目の薔薇」。ある一言で世界が一変する見事な短編。『夕映少年』収録の「星の破片」も素晴らしい味わいです。2013/03/11
うめ
0
この空気感、そして美しい言葉。織りなす情景が鮮やかに目に浮かんで、うっとりとしてしまう、そんな珠玉の作品集。
