内容説明
絵画の中に永遠に封じ込まれた空想建築。その世界は、独特の繊細かつ緻密な表現による具象画のリアルな空気をもつ一方で、常に静寂に満ち、現実の世界とは相容れない不思議な時空間を作り出す。そこに建ちそびえる建築の姿は、建造と修復、そして解体が同時進行し、終わりのない未完の印象を私たちに与える。過去、現在、未来が混在し、完成=誕生せぬまま生成しつづけ、同時に解体しつづける、「永遠の時間」―。1986年のSTILL―静かな庭園―から、2004年POINTS OF VIEW―視線の変遷―に至るまで、ドローイング等を含む、画家自選による約200点を収録。
目次
STILL(1986)
DECORS(1987)
ARCADIA(1988)
PICTURESQUE(1990)
SUBLIME(1991)
LAND‐ESCAPE(1992)
STRUCTURES(1993)
著者等紹介
野又穫[ノマタミノル]
1955年東京都目黒区に生まれる。1975年東京芸術大学美術学部入学。形成デザイン専攻。1978年安宅賞受賞。1979年東京芸術大学美術学部デザイン科卒業。1995年平成6年度(第45回)芸術選奨。文部大臣新人賞受賞(文化庁)
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感想・レビュー
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愛玉子
9
青空を背景にそびえる巨大な建造物。窓ガラスもドアも無く、その部分には無造作に細長い穴が穿たれているだけ。階段―まっすぐなのもあれば螺旋もあり―や梯子で上まで登れるようになっているようだ。人の気配はしない。というより、小鳥一羽見当たらない。打ち捨てられた廃墟という印象ではないが、それが建築中であるのか完成しているのか、はたまた取り壊し中であるのかも定かではない。謎めいて幻想的で、それでいて存在感のある建造物が、ページをめくるたびに現れる。2010/06/03
ぐぐ
2
画集というのは、実物のコピーまたは縮小されたものであって、本来の価値からはほど遠いと思われる。が、野又穫は違う。画集もいいのである。 次々現れる静謐な建物。世界を旅した。 なだらかな時間が流れた。
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