内容説明
家庭内では出産・育児を引きうけ、また劣等であるがゆえ社会から遠ざけられ、さらに、男をたぶらかす悪者とされてきた、物言わぬ「女」たち。彼女らがどのようにとらえられ、表象されてきたか―その波瀾万丈な変遷を丹念にたどる新しい美術史。
目次
第1章 女神の没落
第2章 禍いをもたらす女
第3章 ルクレティア―ファロス(男根)の帝国
第4章 紡ぐ女―アテナとアラクネ
第5章 女英雄ユーディットの変容
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
らむれ
53
#metooの流れで、にわかにフェミニズムに興味がわいているので手に取る。ラファエル前派はじめ、耽美的な女性絵画が好きで、暇があればながめているのですが、本書によると彼女たちの裏にも家父長的・男根崇拝的な背景が…あるよね、そりゃあるよね。そういう世界の仕組みは腹立たしいし、なんとか打ち勝ちたいと思うけど、一方で、ロセッティやクラーナハの美しさをただただ賛美したいと思う気持ちがあるのも事実。女と男、二種類の生物は共存できるのかしらね。2018/01/06
しゅん
17
研究を武器に本気の革命を見据えている。ここ2000年の西洋思想・芸術観の実証的な否定。僕は生物学的に「革命」される立場だろうが、とにかく感銘を受けた。自分はキリスト教精神に実存的な関心を持っているので、「純真な男を貶めるから娼婦は八つ裂きにするべき」などとのたまうルターやアウグスティヌスの男性本位なキリスト教解釈には本気で腹を立てている。2020/09/16
viola
16
驚くほどの頻度で参考文献として論文に登場するので、読んでみました。表紙は観ての通りユーディト。ここ最近は寝る前にひたすら読んでいたので、ベッドに置いたまま寝てしまい、夜中に目が覚めるとぎょっ!!となります(笑)フェミニズムは文学研究には欠かせず、避けて通れない道。読んでみて皆さんが読まれている理由が分かりました。たしかにこれは名著だわ。まず驚くのが、専門書の中でも膨大な先行研究。パンドラ、エヴァ、ルクレティア、アラクネなどが中心。私も論文でほぼ確実に使わせていただくことになりそうです。2012/07/24
ムチコ
9
名著。まずは若桑先生の着実で簡明な筆致に励まされる思い。紀元前からの(おもに)西洋美術において、女性がどのように表象され、位置づけられ、それが浸透していったかを丁寧にひもとき、それらの女性像は男性によって男性に都合よくつくられたものであることをよどみなく示す。現代のわれわれは過去の価値観と作品の良し悪しを分けて考えるよう訓練されているけれど、表象された像には「その価値観を流布し強化する」という役割があったことは必ず心に留めておかなければならない。2020/08/21
アルクシ・ガイ
7
著者のフェミニズムはいつ聞いても心地よい。ダーウィンの進化論がミソジニーを促進したとは驚きでした。少々濃ゆすぎ(長すぎ)て、図書館を梯子するはめになりましたが。2017/04/29